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2, しかし秒で却下

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エリザリケの従者がキッと周りを睨みつけた。
こいつもモノクルを付けたインテリ気取りのいけ好かないヤツだ。
自分より高貴な人間を睨みつけるなんてまったく躾がなってないな!

当の本人は、周りの嘲笑なんてかけらも気に留めずじっと余を見つめてくる。
な、なんだよ。余は間違ってないぞ。
悔しけりゃ何か言い返してみろ!
みんな財政のために仕方なくお前を認めただけで、この国にお前の味方なんていないからな!



「ルチアーノ、その婚約破棄は断る。」



よく通る華やかな声が、会場に漏れ聞こえていた嘲りを一瞬で鎮めてしまった。

今なんて言った?断る?

「なっ……!貴様の勝手で断れるわけないだろ身の程知らずが!それに無礼な呼び方をするな。余は王太子だぞ!!」

「でも俺たち夫婦になるんだからこれが普通だろ?」

目眩がしてきた。何だこの粗野な態度は。
ここはエルペーニャ宮廷だぞ!?
フローレ公国も雅な都市のはずだが、その大公子息がこれ!?

「それに、勝手にできないって言うならそっちも同じじゃないか。勝手に破棄なんて出来ないだろ。この婚約は教皇様に認められてるし。」

「ぐぬぬ……」

いかん。思わず高邁な余に似合わない呻き声が出てしまった。

余だってそんな事はわかってる。
ただこうすれば貴様が怒って帰ると余は思ったから……!

「周りも困っているだろう?言い分はわかったから、この場は治めて後で落ち着いて話し合わないか?」

う゛う゛う゛っ……
おかしい。
なんで余がワガママを宥めすかされてるみたいな感じになってるの!?

返しに困ってコーツに助けを求め視線を送る。
黙って首を横に振られてしまった。

唇をかみしめて立ち尽くす余を出し抜いて奴が動いた。

「お集まりの皆さん、俺が至らないせいでお騒がせして申し訳ない。どうかこの先も楽しんで。」

粗野な言葉に見合わない優雅な礼を奴が披露すると、会場にほぅ……と貴婦人たちのため息が響いた。

いやいや、結構な夜ですよ、なんて紳士連中もおべっかを奴に使いだす。

いつもなら彼女たちが見惚れるのは余なのに。
余の元に我先に紳士どもが挨拶に来るのに。

面白くない面白くない面白くない!

「ミレイナ、今宵の会は彼がいれば良いようだ。余達は二人きりになれるところに行こう。」

腹が立つので帰ってやる。
後で慌てて戻って来いと言ってももう遅いからなっ。

「はぁい♡ルチアーノ殿下、いっぱい愛してくださいましねっ!」

シュンツがワタの詰まった胸を腕に押し当てて微笑む。

うん、シュンツ、それは流石にやりすぎな気がするぞ。
背中にぶっ刺さる周りの冷ややかな視線から逃げるように、余は舞踏会のホールから去った。
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