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4, なんかきた
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結局明日からあのフローレ人にどんな嫌がらせをするか考えていてすっかり夜も遅くなってしまった。
ベッドに入ってうとうとしていると、部屋の端からパシパシと窓を叩く音がして眠気が覚める。
起き上がって月明かりを頼りに窓際に向かい、音のした窓を見ても何も異常はない。
当たり前だ。ここは5階で、防犯もしっかりした屋敷は外から簡単に入れるような造りはしていない。
風に飛ばされた枝でも当たったのかと思いながら念のため窓を開けて確認した。
遠くに夜警の松明の灯りが見える以外は月明かりに照らされたシルエットの世界が広がっている。
何かがここまで飛んでくるような風も出てない。
気のせいかと思った直後、開いた窓から黒い塊が現れた。
「ひっ……」
驚きに言葉を失う。
塊は窓際に立った余を押し倒すように余の部屋に入ってくると、余がバランスを崩して後ろに倒れる前に背中に腕を回して抱きしめてきた。
暖かい体温や触れる感触で、余より体格のいい生身の人間の男であることがわかる。
逃れようと身をよじるけど強い力で振りほどけない。
「……来ちゃった……。」
その声には聞き覚えがあった。
舞踏会で余に口答えをしてきた憎らしい声だ。
「なっ、貴様エリザっ……」
「しーっ……夜警にバレるだろ。」
とっさに息を詰めて声を抑える。
……いや、バレてよくない?ってかバレなきゃダメくないこれ?
「ふざけっ!……だれかぁ!!っむぐっ……」
叫ぼうとしたら大きな手に口を塞がれた。
「やっぱりそこまで単純じゃないか。」
楽しそうに言って片手で軽々と余の腰を抱くと引きずるようにベッドに移動する。
ボスンとベッドに沈められ、抵抗する間もなく馬乗りになられた。
両手をひとまとめに掴まれて頭上に押さえつけられる。
「口、離すけど大声出さないでくれよ。俺を夜中にベッドに招き入れてるなんて知られたら、婚約大歓迎って言ってるようなもんだろ?」
はぁ!?貴様が勝手に入ってきたんだろうが!
「んーっ!ん゛!!」
抗議すると言いたいことが伝わったらしい。
「だって、こんな警備が厳重なところ、誰かが中から入れてくれないと入れないよな。」
こいつの言い分は最もに思えた。
あの窓には近くに飛び移れるような木もないし、外壁だって足場はろくにない。普通の人間ならここまで登ってくるのは無理だ。
や、もうホント、何で入ってこれたの?
それにたとえ窓から無理に押し入ってきたというのが通じたとして、この国の王子としてこの男に組み敷かれている頂けない格好を他人に絶対見られたくない。
余は仕方なく体の力を抜いた。
負けを認めたわけじゃない。
油断させるだけだ。隙を見て出し抜いてやる。
「ありがとう。」
嬉しそうな声がして手が離れた。
「いったい何しにきたんだ。上から退いて出て行け。」
口が自由になった以外状況は変わらず、腕と体を拘束されてろくな身動きもできやしない。
「嫌だ。舞踏会でルチアーノが言ったこと話し合いたくて来た。」
間近で綺麗な顔に瞳を覗き込まれて居心地が悪い。
月明かりだけで暗いから見えにくいとはいえ距離が近すぎないか?
「話すことなんてない。言った通りだ。余は真実の愛に目覚めたので、貴様との婚約は破棄する。」
「夜一緒に過ごしてもいないのに真実の愛?」
「きっ、今日はたまたまだ!」
「令嬢に愛してくださいって言われてたのにたまたま1人で寝てるのが真実の愛?」
ぐっ……これだから話し合いは嫌なんだ勝てないからっ!まずいな。せめてコーツがいるときにしないと。
「うるさい!彼女とは心の繋がりがあるの!この話終わり!!もうしないからな!余は寝るんだから手を離せ。」
「ふぅん……なあ、俺にはチャンスないの?」
ベッドに入ってうとうとしていると、部屋の端からパシパシと窓を叩く音がして眠気が覚める。
起き上がって月明かりを頼りに窓際に向かい、音のした窓を見ても何も異常はない。
当たり前だ。ここは5階で、防犯もしっかりした屋敷は外から簡単に入れるような造りはしていない。
風に飛ばされた枝でも当たったのかと思いながら念のため窓を開けて確認した。
遠くに夜警の松明の灯りが見える以外は月明かりに照らされたシルエットの世界が広がっている。
何かがここまで飛んでくるような風も出てない。
気のせいかと思った直後、開いた窓から黒い塊が現れた。
「ひっ……」
驚きに言葉を失う。
塊は窓際に立った余を押し倒すように余の部屋に入ってくると、余がバランスを崩して後ろに倒れる前に背中に腕を回して抱きしめてきた。
暖かい体温や触れる感触で、余より体格のいい生身の人間の男であることがわかる。
逃れようと身をよじるけど強い力で振りほどけない。
「……来ちゃった……。」
その声には聞き覚えがあった。
舞踏会で余に口答えをしてきた憎らしい声だ。
「なっ、貴様エリザっ……」
「しーっ……夜警にバレるだろ。」
とっさに息を詰めて声を抑える。
……いや、バレてよくない?ってかバレなきゃダメくないこれ?
「ふざけっ!……だれかぁ!!っむぐっ……」
叫ぼうとしたら大きな手に口を塞がれた。
「やっぱりそこまで単純じゃないか。」
楽しそうに言って片手で軽々と余の腰を抱くと引きずるようにベッドに移動する。
ボスンとベッドに沈められ、抵抗する間もなく馬乗りになられた。
両手をひとまとめに掴まれて頭上に押さえつけられる。
「口、離すけど大声出さないでくれよ。俺を夜中にベッドに招き入れてるなんて知られたら、婚約大歓迎って言ってるようなもんだろ?」
はぁ!?貴様が勝手に入ってきたんだろうが!
「んーっ!ん゛!!」
抗議すると言いたいことが伝わったらしい。
「だって、こんな警備が厳重なところ、誰かが中から入れてくれないと入れないよな。」
こいつの言い分は最もに思えた。
あの窓には近くに飛び移れるような木もないし、外壁だって足場はろくにない。普通の人間ならここまで登ってくるのは無理だ。
や、もうホント、何で入ってこれたの?
それにたとえ窓から無理に押し入ってきたというのが通じたとして、この国の王子としてこの男に組み敷かれている頂けない格好を他人に絶対見られたくない。
余は仕方なく体の力を抜いた。
負けを認めたわけじゃない。
油断させるだけだ。隙を見て出し抜いてやる。
「ありがとう。」
嬉しそうな声がして手が離れた。
「いったい何しにきたんだ。上から退いて出て行け。」
口が自由になった以外状況は変わらず、腕と体を拘束されてろくな身動きもできやしない。
「嫌だ。舞踏会でルチアーノが言ったこと話し合いたくて来た。」
間近で綺麗な顔に瞳を覗き込まれて居心地が悪い。
月明かりだけで暗いから見えにくいとはいえ距離が近すぎないか?
「話すことなんてない。言った通りだ。余は真実の愛に目覚めたので、貴様との婚約は破棄する。」
「夜一緒に過ごしてもいないのに真実の愛?」
「きっ、今日はたまたまだ!」
「令嬢に愛してくださいって言われてたのにたまたま1人で寝てるのが真実の愛?」
ぐっ……これだから話し合いは嫌なんだ勝てないからっ!まずいな。せめてコーツがいるときにしないと。
「うるさい!彼女とは心の繋がりがあるの!この話終わり!!もうしないからな!余は寝るんだから手を離せ。」
「ふぅん……なあ、俺にはチャンスないの?」
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↓めちゃくちゃ世話になっている
B L ♂ U N I O N
B L ♂ U N I O N
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