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14,(終)

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「さっサティ!?」

とっさにルドルフから降りてサティの姿が映っている方に駆け出そうとしてグッと腕を掴まれた。
直後、ズボッとさっき脱いだ服を頭から被せてくるルドルフ。

そうだ俺裸だった。
慌てて袖を通しながらサティに近づく。

「あ、ごめん。気にしないで。終わるまで待ってるから……」

サティは、指の隙間からこちらを見て言った。

「も、もう!待たなくていいって!」

「そう?いいの?」

「いいって!サティ、会いたかった。大丈夫か?どっか痛いとか、お腹空いたとか、ほら……」

「うん、大丈夫。僕ずっと魔界にいたんだ。今まで教えられなくてごめん。」

「全然気にすんなよ!俺こそごめん。俺がしたこと迷惑だったよな。ラオシが言ってた復讐とかもうやめたから、安心して。」

「本当?」

「うん。こうしてサティが元気なら、必要ないだろ。」

俺がそう言うと、サティが嬉しそうに笑った。自分の選択は間違いじゃないと少しほっとする。

「ありがとう。ね、ね、トマ、大きくなってたね。格好よくなってて僕びっくりしちゃった。」

「うん。もう5年経つんだ。」

「そうなんだね。こっちにいると分からなくて。僕はもう……多分歳取らないと思う。」

「サティは、もう戻ってこないの?」

「うん。僕魔王様といたいんだ。あっ……ちゃんとトマに紹介するね!魔王様!そんな隅っこいないでほら!」

サティが少し画面から離れて、男を連れて戻ってくる。
ラオシの言ったとおり、首を自分で飛ばしたはずの彼はピンピンしていた。
銀髪の頭にツノが生えた背の高い姿は昼間見た時のままだったけど、その顔は彫刻のように綺麗だ。
そこには出会った時に感じた恐ろしさはない。これが彼の本来の姿なんだろうか。

「あの、魔王様です。えっと、えっと、僕の、恋人……なの。」

サティはそう言うと真っ赤な顔を手で覆った。

「はあ!?恋人!?こいつが!?」

思わず魔王を指差してしまった。
だって、こいつが魔王なら世界を脅かす恐ろしい存在のはずだ。
魔王の静かな目にチラリと見返されギクっとする。

「トマよ。長らくサティの無事を伝えられずすまなかった。これまで我がそちらの世界にできる接触は限られていたのだ。心配かけたな。」

な、なんだいい奴だな。
どういうことだ。

「あー、サティが幸せなら、いいと思う。」

俺は指していた指を引っ込めた。

「うん。僕、魔王様と一緒にいるととっても幸せ。」

嬉しそうなサティ。じゃあ、いいや。

「ね、ね、トマの恋人さんも紹介して?」

サティが期待の篭った目で見てくる。

「恋人……では……」

チラっとルドルフを見た。
恋人なのか?俺がさっき無理やり迫っただけなんだけど……。

「申し遅れたな。ルドルフだ。」

ルドルフは特に恋人ってとこを否定しなかった。え、いいの?否定しなくていいの?

「ルドルフさん。サティです。初めまして。トマをよろしくね。泣かせたら許しません。」

「分かった。マキアス、久しぶりだな。色々面倒かけた。」

「ルドルフ……構わぬ。こちらも一つ謝罪がある。もうそちらに魔界の者が流れ着く事はない。」

「そうか。1000年前に戻るんだな。」

魔物が出なくなる?いいじゃないか。

「うむ。されどそちらに流れた魔物の肉体や魔力がこの1000年その地に恩恵を与えていたのも事実。相当な影響となるであろう。」

確かに、魔物の肉や皮は高価な素材だ。体内から取り出す魔石は多くの魔道具に使われてる。

「お前はお前のすべき事をしただけだ。魔物の恩恵も無くなるが、悲劇もなくなる。僕の口で言えた事じゃないかもしれないが人類は大丈夫だよ。」

「うむ。人になる事を願い、ずっとそばで見てきたそちが言うのであればそうであろう。……サティ、今は少し離れよ。」

魔王が話し出したくらいからいきなりしがみつき出したサティを、流石に魔王が窘めた。
ルドルフが魔王の名前を呼んだ途端に目の色変えてたけど、まさか……

「まままま魔王様ってお名前あるの!?」

「先生は我にマキアスと付けた。故に同輩は左様に呼ぶ。しかしただの識別に過ぎぬ。サティは好きに呼ぶが良い。」

「それお名前じゃん!なんで教えてくれなかったの!!」

「教えた方が良かったか?」

「当たり前だよ!……マキアス。」

「っ……おかしい。辛抱堪らぬ。」

魔王は呟くと、サティをぐっと抱き寄せてキスした。
魔王の喉やサティの頬が動いているので、多分すごい深いやつ。

「んんっぷはっ……ま、マキアス!?あっ……まって」

魔王がサティを押し倒したせいで、画面から二人が消えた。
目を丸くして顔を見合わせるルドルフと俺。

「あっ、まだトマと繋がってるから……ひぁ、っ……あっ、あんっ、らめぇ……」

そこで絵と音が途切れ、ヒヨコはシュルシュルと縮んで元に戻った。

「あいつ、むっつりだったんだな。」

ルドルフが意外そうに言う。
俺も親友のアレを垣間見てすごい複雑な気分だ。

「……こっちも続きする?」

ルドルフが俺の腰を抱き寄せて撫でてくる。

「ぁっ……い、いい、けど。」

「じゃあ、まずはお仕置きからな?」

へ?

その言葉にちょっと離れようとしたけど、がっしり腰を捕らえられて出来なかった。

「僕をずっと騙してた事と、魔物を召喚して人類を滅ぼそうとしたお仕置きな?」

は?え?

「特に僕を騙したことはこってり絞ってやるから、しっかり反省しろよ。」

絞るって、ナニを絞るんですかね……。

青褪める俺を、ルドルフは意気揚々と出現させたお仕置き台にセットした。


(おわり)



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ここまでお付き合い頂きありがとうございました!

他にも短編を投稿してますので良ければ作品一覧からどうぞ!
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