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しおりを挟む仕方がないので、今日も人類を滅ぼすための準備に取り掛かる事にする。
俺は人気のない森に天馬で向かった。
少し開けた場所で呼吸を整える。
酷い方法とはいえ、昨日もルドルフから魔力を貰った。何か新しい力に目覚めてないだろうか。
そう思って目を瞑り自分の内側に意識を向ける。
うーん。攻撃力が上がってる気はしない。これまでよりも複雑な術ができそうな感じ?
そこでふと、今朝のギルドの連絡を思い出した。
今こそ魔界から俺の力で魔物を呼べないか。
魔界は別の世界に存在していて、この世界を滅ぼそうとする邪悪な魔王が魔物を送り込んだり災厄をもたらしたりしている。
と、村の長老に習った。
自分たちのが邪悪なくせに。
ともかく、魔界にはルドルフじゃないと倒せないような凶悪な魔物がたくさんいるんだ。
彼らを召喚できればと常々思っていたが、これまでは俺の実力が足りなかった。
でも今ならできるんじゃないか?
早速肩に下げていたカバンをゴソゴソ漁ってルドルフの金で買った魔術書を取り出す。
この高価なアイテムバッグも魔術書もルドルフの金で買った。
だって自分じゃ使わないから好きに使っていいって言ってたし、どうせ俺が人類を滅ぼしたら金なんてあっても仕方がない。
奴には「こんなに貢いでるのにどうしてそう可愛げがないのか。」とよく文句を言われるけど、知るか。
俺は騙されてる間抜けなあいつを利用してるだけだからな。
地面に座り何度も参照して少し手垢で汚れたページをめくる。
アイテムバッグは土や枯葉で汚れないように胸に抱えた。
何度も失敗している召喚術の記述を念入りに確認する。
よし。見直し終わり。
まずは召喚地点を示す魔法陣作成からだ。
ブツブツ呪文を呟いて魔力を放出するとそれは光の線でできた丸い魔法陣になる。
それを慎重に地面に広げた。
次いで召喚魔法に移る。
この世界にあるものを出現させるんじゃなくて、魔界の魔物を呼び出すんだから魔界につなげるイメージじゃないといけない。
……魔界って何処にあるんだ。
そういえばこの魔法、知らない場所から召喚できたっけ?
ちょっと不安になったけど俺なら大丈夫だ。絶対できる。
「闇の力よ、ここと彼の地をつなぎ我が求めに応えよ。この地に、えっと、何か人類を滅ぼすすごい強い魔物を呼び出してくださいお願いします!」
手の中に溜めた渾身の魔力をえいやっと魔法陣に打ち込む。
ポンッと爆竹を炸裂させたような煙が中央から吹き出た。
「わ!何か出た!」
煙の中に物体の影が見えて気が高まる。
けど、何だかやたら小さい。
煙が散った後いたのは、ふわふわの薄青い羽毛でまん丸になった小さなヒヨコだった。
「なんだこれ。」
「ぴ?」
ヒヨコが俺を見る。
「ぴぃ!」
ぴょこんと突き出た尾羽をふりふりさせてこちらによちよち走ってくる。
いや、おれ親鳥じゃないから。
足元に来たヒヨコを恐る恐る掌に包んで持ち上げる。
うん。やっぱりふわっふわのヒヨコだ。
きっとおれより弱いと思う。
「お前なんか呼んでないよ。」
「ぴぃ?」
丸い目で見つめてくるヒヨコ。
……うん。きっとこいつは育てたら俺に従順な破壊神になるに違いない。
別に可愛いからとかではなく、重要な先行投資だ。
ルドルフには内緒で飼おう。
あいつ、俺が拾った犬とか猫、俺の仕事の邪魔だからって全部他所にあげちゃうからな。
仕事って言ってもルドルフの身の回りの世話くらいしかしてないのに。
そうと決まったら、街で鳥籠と餌を買おう。
そこまで思った時、背後から知らない声が聞こえてくる。
「呼んだ?」
振り返ると、そこには見覚えのない黒髪の男が立っていた。
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