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12,
しおりを挟む「サティ!!!」
何もない空間に呼びかける。
当然反応はなかった。
「大丈夫。魔界に戻ったんだよ。あの死んだ2人も戻れば魔力で蘇生するでしょ。」
ラオシの落ち着いた声に振り返る。
「あれは本物のサティでした。」
「どうかな。昔はそうだったかもしれないけど、今はもう魔の一員だ。魔界に戻ったのもあの子の力だね。彼が自分で選んだ事だけど。」
「いや、サティだよ。あの頃と変わらない……。サティ、良かった。生きてて……」
きっと、魔界であの魔王と呼ばれた魔物と一緒だったんだろう。
見た目は怖かったけど、2人の様子から見てサティはあいつを信用していたようだ。
首飛んでたけど、本当に大丈夫かな……。
「ラオシ、ありがとう。ラオシのおかげでサティが生きてるって分かった。」
俺が言うと、ラオシは口をポカンと開けた。
その後すぐに笑いだしたけど。
「あっはっはっ……すごいね。この状況で僕にお礼言っちゃう?」
ラオシがぐしゃぐしゃと俺の髪をかき混ぜる。
「ちょっ、やめろよ!」
「やだ。君想定外に可愛いんだもん。あー連れてきたい。」
正面からがばりと抱きつかれた。
「は、はなせっ……」
「トマ!」
ラオシを引き剥がそうとバタついていると、知った声に呼ばれた。
すぐ近くに、天馬に乗ったルドルフが降り立つ。
「おいあんた、トマから離れ……」
低い声はラオシの顔を見た途端途切れた。
「先生……」
顔を強張らせたルドルフはあの魔物と同じ呼び方でラオシを呼ぶ。
それから俺とラオシを交互に見た。
「やっぱり、トマはあんたの眷族だったか。」
は?
「そそ。君を人間にしてあげた頃に仕込んどいた僕の直系だよ。こんな使い方になるとは思ってなかったけど、マキアスの事でちょっと手伝ってもらったんだ。」
は?
「ラオシが俺の父親なのか?」
「んーん。僕がこの世界に眷族を仕込んだのは1000年前だよ。えーっと、その場合なんて言うんだろ?ひい×30くらいじいちゃん?」
ちょっと理解が追いつかない。
「ほらルドルフ、君が何もトマに説明してない所為で知恵熱で倒れそうな顔してるじゃないか。」
「あんたの眷族かもしれないなら何しでかすか怖くておいそれとベラベラ話せないだろ。」
「酷いなぁ。僕は君たちの幸せしか考えてないのに。」
「それは知ってる。けどやり方が回りくどすぎるから。」
「そこは大目に見てよ。僕は因果の『因』。どうすればいいかは分かるけど、何故いいかはやってみるまで分からないんだもの。」
ラオシの言葉にルドルフはやれやれと言った風に肩をすくめた。
「で、やる事は終わったのか?」
「ここではね。トマ、色々ありがとう。デート楽しかったよ。幸せにおなり。」
ラオシが俺の頭をまたくしゃくしゃ撫でた後、話しかける間も無くその姿が消える。
「ラオシ!?」
呼びかけても何も帰ってこない。
さっきからまるで理解が追いついてないけど、一体今日は何なんだ?
どうしたらいいか分からずルドルフを見上げる。
「説明する。まずは帰ろう。お前の馬が心配してる。あと何か変な青い鳥も。」
そう言われ、天馬に乗ったルドルフの後ろにまたがって2人で屋敷に帰った。
俺がラオシに連れていかれた後、俺の天馬は自力で屋敷に帰ったらしい。
そこに青いヒヨコもしがみついてた。
帰ってきたルドルフがそれを発見して、ピィピィうるさい鳥に俺の魔力の残滓を感じたたからそれを辿って俺を見つけたそうだ。
「他に聞きたい事は?」
食事を済ませた後、リビングのソファーセットに座ってルドルフに色々聞いた。
「ルドルフは人間じゃなかったんですか?」
だって、ラオシが1000年前にルドルフを人間にしたって言ってた。
「ああ。僕はかつて世の上位存在の一人としてこの世のことわりを統べていた。人間が神とか天使って呼ぶやつだ。僕が姿を表すと、人間は僕のことをドラゴンと呼んだけどね。」
「つまり、ルドルフは神様だったってこと?じゃあ、今神様はもういないの?」
「僕と同じ存在は何人もいる。それぞれがそれぞれにあらゆる世界に作用し、世界は調和を保つ。その作用を、人が神と呼ぶだけだ。お前が会った先生は、その相談役兼監督役みたいなものをしている。」
「よくわかんないですけど、ルドルフは凄い存在だったけど人間になったってことなんですね。何故?」
「……たまたま天啓を伝えに姿を現したこの世界で、僕は一人の女性を愛した。それで、彼女と一緒になりたくて、安易に人間にして欲しいと先生に頼んだ。」
胸がズキンとした。1000年前の話だって言い聞かせる。
「それで?」
「人間になったよ。何の力も持たない老人になった。彼女はそんな僕を受け入れてくれた。そして、ある日魔物に襲われて死んだ。」
「魔物の所為で亡くなったんですか?」
「いや、僕の所為だ。この世界に魔界から魔物が流れて来るのは、僕が人間になった代償だから。」
確かに習ったことがある。魔物は1000年くらい前から突然出現するようになったって。
「彼女が死んで何年、何十年経っても老いぼれのはずの僕は死ななかった。それも僕の選択の代償だった。」
ルドルフは袖をまくって俺に腕を見せた。
そこに、俺の腕にある文様と似たものが浮かび上がる。
「あ……」
「この文様は、人になる代償を払う証として先生に刻まれた。トマが昔街で会った老人は僕だよ。」
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