R18/短編/ﾊｲｽﾍﾟｴﾘｰﾄ騎士は復讐に燃える平凡騎士見習いを弄ぶ

7,

「そういえばルドルフ、昨日のことです、けど……」

「ん？」

俺が用意した朝食をペロリと平らげたルドルフにコーヒーを出しながら話しかける。

「あの……お、お仕置き……の時、俺何か変なこと言ってませんでした……？」

朝から仕事が入って後回しにしてたけど、俺昨日人類を殺すとかどうとか口走った気がする。
こいつのせいで酷い状態だったからおぼろげなんだけど。

「変なこと……？ああ、自分の尻の穴のことおまんこって言ってたな。」

「あっあれはあんたが……！」

「なに？まだシたいの？昨日散々シたのに？これから僕仕事入ってるんだけど。」

「は！？違いますぅ！もういい！忘れてください。」

肩をすくめたヤツのスカした顔にコーヒーをぶちまけてしまいそうだ。
そうなる前に乱暴に空になった食器をガチャガチャまとめはじめる。
こんなふざけた態度を取るくらいだ。俺の真意なんてバレてるわけがない。

とたんに目の前の食器が消えた。
ルドルフがキッチンに転送したんだとすぐに思いあたる。

「トマ」

コーヒーを飲んでると思っていたルドルフがすぐ背後にいて俺の腰に腕を回して抱きついてきた。

「本当にしない？僕と、お仕置きじゃないセックス。」

大きな体を擦り付けて耳元で囁いてくる。

「……ルドルフ……」

俺はくるりと腕の中で体を反転させて彼の顔を見上げた。
首に腕を回して、グッと引き寄せるとルドルフが瞳を閉じて顔を寄せてくる。

ゴッ

その顔の真ん中、鼻の頂きを狙って思いっきり自分の額を打ち付けた。

「ふぐっ！？」

ルドルフが鼻をおさえて仰け反る。

「人をからかってる暇があったらもう現場に行ってください！！あ、言ってましたけど俺は今日元々休暇ですから。ご飯作ってあげただけ感謝してね！」

「おまへ、僕は上官なんだが……」

ふん。知るか。何せお前のことだって俺が滅ぼす人類にばっちり入ってるからな！

休暇が無くなる前に、俺はさっさと部屋を出て台所に置いといたアペルの実が詰まった麻袋を抱えると街のスラム地区に向かった。




スラム地区に着くと、キョロキョロと道にいる路上生活者を見て廻る。
新顔そうな人がいて、もしやと思って声を掛けた。

「あぁ？」

声を掛けた男は期待したより顔立ちが若かった。

「あ、すみません。実は人を探してて……」

言いながらアペルの実と、タバコを一本渡す。
男が吸い口をくわえたのを見て火の呪文を呟くと、少し驚かれた。

「魔法使い様が俺たちみたいのに何の用だい？」

「腕にこれに似た文様のあるご老人を探してるんです。」

そう言って服の袖を肘までまくって自分の文様を見せる。
一見刺青みたいだけど、生まれつきの痣だ。

「見ねぇな。」

「そうですか。ありがとう。」

礼を言ってほかの浮浪者にも聞きこむため歩き出す。

探してるのは昔成人のお祝いにサティと街に来た時に出会った人だ。
1人はぐれてスラムに迷い込んだところを助けてくれたじいちゃん。

腕に俺のと似てる文様を持っていて、バカな俺はその時は単に似てるとしか思わなかったけどサティに言ったらもしかして俺の父親に関係がある人じゃないかって言われた。

母さんは小さな旅芸人一座の踊り子で、夜の仕事もしてて俺が生まれた。
だから父親が誰か分からない。
母さんが死んだ時稼ぎ頭を失った一座にまだ5つだった俺の面倒を見る余裕はなかったようだ。かといって捨てたり売ったりするには情が移りすぎてたのか俺は母さんが捨てた故郷に置いていかれた。

別に父親なんて今更どうでもいいけど、何となくあのじいちゃんにはまた会いたいと思ってる。
俺が人類を滅ぼす時もじいちゃんはまあ生かしてやってもいい。

なのに今日もじいちゃんは見つからないまま、麻袋とタバコの箱が空になるだけだった。