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「何で中央政府はサティを殺した村の連中を罰してくれないんだ!人殺しは犯罪だって自分たちで決めたくせに!!」
「中央の権力も万全じゃない。特にお前の村のある侯爵領は最近領主が中央に下ったばかりでまだ管理が及んでないし。」
「ルドルフ、でも、でも俺悔しい。サティの仇を取りたい……うっ、ううぅっ……」
「トマ、そうしたら、僕がお前に魔法を教えよう。私付きの見習い騎士になれるよう手配してやる。しかし、復讐の相手は人間じゃない。元凶になった魔王だ。お前は強き魔法騎士になり、魔王に報復しなさい。」
「…………わかった。ルドルフ、俺は最強の魔法騎士になる!!」
————————
そこでふと目が醒めた。
見たところルドルフの執務室だった。
助けられたのか。
今の……村を出たあと街を浮浪していてルドルフに拾われたばかりの頃の夢。
まだぼんやりする頭を抑えようとして、手首がガキリと何かに阻まれた。
見れば斜めにされた拷問椅子のようなところに寝かされてて手枷がはめられ肘掛けに腕が固定されている。
一気に寝ぼけた頭が冴えて自分の体を確認した。
肘掛けと足置きがある全身を受け止める椅子のようなものに座らされ、左右の腕と両足がそこに固定される格好にされていた。
足置きは二股に分かれていて、そこに足首と膝頭、太ももを皮ベルトでぴっちり括られている。
足は肩幅より広げられていて、非常に無防備だ。
そして、俺は服を着ていない全裸の状態だった。
まずい。非常にまずい。
過去を思い出して焦る。
無駄なのは分かりきっていたけど、万一脱出出来るんじゃないかと望みをかけて体を捩って暴れた。
「無駄な事はやめるんだな。お前これまで一度だって抜け出せた事ないじゃないかトマ。」
「ひっ……」
俺の背後に気配を消し立っていたルドルフが耳元で囁いてきて、やっと同じ空間に奴がいたことを知った。
「そんなに怯えるなって。やましい事がないならすぐに解放してやる。」
妙に優しい声音に額に脂汗が浮いてくる。
やましい事しかない場合は……
「……。」
「あの空き家の家事、僕が火元を調べたらお前の放った魔法だったんだが?」
やっぱりバレてる。
「すすす、すみません!練習で放ったファイアボールが間違って民家に当たっちゃって!!」
「風魔法で煽ったのは?」
「煽ってません!火を搔き消すためにしたんです。でも炎がさらに燃え上がって……」
「そう。つまり、アクシデントなんだな?」
「もちろんそうですよ!俺が火つけなんて……」
「そっか。よかった。僕の立場上部下が粗相で捕まるのはちょっと歓迎できないからね。」
はぁ、今回も信じた。ちょろいぜ。
けど、それで済まないのも分かってる。
「まあ、お前がやった事は僕しか知らない。だから、今回の事は僕がお仕置きして終わりにしようか。」
男らしい端正な顔でにやりと笑うルドルフに、引きつった笑いでしか返せなかった。
「あの、ごめんなさい!次は気をつけるからっ……」
俺の前に回ってきた男に必死で訴える。
肩まで自然に伸ばした豊かなバーミリオンの髪はこの国では彼しか持っていない。
それはこの男が聖なる火竜の力を持つ証だ。その驚異の戦闘力は国一番の国王付き魔法騎士と言われる所以である。
俺と10歳も歳が違わないのに。
「なぁ。今回は下手したら人が死んでたな。」
「……。」
殺そうとしていた、なんて口が裂けても言えない。
「だからちょっといつもよりキツくするから、しっかり反省しろよ。」
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