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◆◇ドラゴンの獣人

世界でたった一匹の獣人7

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緩く広げられた翼が揺れる様はいっそ優美で、その下で快感に身を捩るマヤを際立たせる。
「正にヴィオモラの為に生まれて来たような子だな」
ザッツが溜息交じりに言うと、ガルフは崩れ落ちそうなマヤの体を抱え込んで、
「哀れなもんだよな」
と言った。
ザッツがそれを聞いて眉を寄せた。
本音を言えば、ザッツだってガルフの言っている事に同意だ。
しかし、それを言葉にしてはいけない時もある。
「人の人生を簡単に哀れむんじゃねぇ。マヤはそれでもきっと精一杯生きてきたんだ。どこにも正解を教えてくれる物が無い世界で、たった一人で人も殺さず。愛想だけ振り撒いて、凄いじゃないか、寝こけたお前の懐から銅貨の一枚も取らず帰ったのだろう?」
諭すザッツからそっぽを向いて、ガルフが言い訳をした。
「別にそんな意味で言ったわけじゃねぇ」
まるで拗ねた子供の様な仕草だった。
大きな部下の、子供みたいな仕草にザッツは苦笑した。
「妬きもちを妬くときは素直に妬かんと拗れるぞ、マヤの頭はセックス以外は子供みたいなものじゃないか、大人みたいなおもんばかりなんて出来ないぞ」
「わかってますよ」
とガルフがやはり拗ねた声で言う。
「おかげでマヤの生い立ちも何でヴィオモラに住んでいるのかもイマイチ分からねぇんだ。しばらくこっちでコイツ囲いながら調べて来て良いですかね?」
「あぁそうしてくれ、体は健康そうだし、医療部隊の解析はそんなに急がなくても良いだろう。その様子じゃ保護が必要なのか、関係者がいるのかも分からない」
「そういえば、しきりに『ムー様』と呼ぶ人物の名を口にするんだが、その人物はどうやら呪いか病で死んでいるみたいです」
「・・・いちおう墓の場所も確認しておけ」
「わかりました」
そこで一応その日の報告は終わった。
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