上 下
90 / 113
◇マヤ

教会46

しおりを挟む
灯りを暗くして、布団をかぶり直してもマヤは嬉しそうに自分の首輪に繋がっている鎖を指先に絡めてあそんでいる。
その姿は本当に嬉しそうで、
「お前、首輪着けられるのそんなに嬉しいの?」
思わずもう眠りに着きたいガルフも聞いてしまった。
マヤがあっけらかんと答える。
「うん。何か一人じゃないって気がするから好き。首輪って、所有の証でしょ?首輪着けてくれるお客さんはねぇ、マヤを長く買ってくれる人が多いし。だからきっとガルフも長く買ってくれるね」
そう言って無邪気に笑った。
「俺は、お前を離す気なんてサラサラ無ぇよ」
「きゃー」
ガルフの言葉にマヤは娼夫らしく無邪気に喜んで抱き着いた。
「首輪つけてそう言ってくれる人は本当に皆長かったんだ。だからきっとガルフも長いね」
本当に、嬉しそうにそう言った。
「・・・そうか」
「うん」
流れる様な銀髪をゆらして、少し頬を蒸気させながらマヤが嬉しそうに笑う。
ガルフは『死ぬまで一緒』のつもりで行ったのだが、マヤにはいまいち通じている気がしなかった。
仕方が無い、マヤの話が全部本当なら、マヤは200年以上も娼夫をやって来た事になる。
そして、マヤは未だに娼夫だ。
抱き着いて来たマヤをガルフは抱きしめた。
ここでガルフが何を言ってもマヤには届かないだろう。
第一、届く程の言語力がマヤには備わっていない。
だから、今は娼夫を今すぐ辞めろとも言えない。
「これからはお前が付いてこれる場所に任務を限定してもらわなきゃな」
「ガルフのお仕事の話?マヤどこでも着いて行けるよ?」
ガルフの独り言にマヤが無邪気に答えた。
「僕一人帰るなら飛べばどんなに遠くからだって長くて半日だもの」
「・・・やめろ、騒ぎになるだろう」
ガルフは慌ててそう言った。マヤがそれを聞くとも思えなかったが。

しおりを挟む

処理中です...