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◇マヤ

教会44

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『皆よろこぶのに』。そう言ったマヤのキョトンとした表情には、一点の陰りも無かった。
恥じらいも、罪悪感も、羞恥心も、嫌悪感も、屈辱も、かといって虚栄も誇らしさも何もないただ有るがままを言っている。
すっかりマヤに心を奪われているガルフには、それが悔しい。
「お前の客は、そんな事は教えたのに、金の数え方すら教えなかったのか」
ガルフはそれだけ言うと、もう後は言葉にならなくてマヤをきつく抱きしめた。
マヤが無邪気に『きゃー』と楽しそうに笑う。
「お金の数え方?マヤ指の数までしか分からない!」
無邪気にキャハハと笑う姿はまるで幼児の様だった。
その姿形との不釣り合いな無邪気さは、世界平和を目指す事を理念に掲げる組織ウロボロスの、仮にも一員であるガルフの心に痛く突き刺さった。
同時に、多くの男達がこういう、いわゆる『可哀そうなオンナ』と言われる者達に興奮する事も知っていた。
大概の男というものは、知識的にしろ、体力的にしろ自分より程度の低い人物を性欲のはけ口として選ぶ、そこに愛情が無い時は殊更に。
まるで、ゴミ箱や公衆便所の様に便利に利用する。
マヤの職業はそもそもからして性欲のはけ口になる為の職業でも有る、今までどんな扱いをされて来たかと思うとやり切れない思いに駆られた。
「くそっ」
ガルフが悪態をついたとたん、マヤが無垢な瞳で見当違いの科白を行った。
「トイレ行きたいの?いってらっしゃい?」
あまりの分かっていなさに、ガルフは面食らい、一人憤る自分が滑稽に思えて思わず笑って、
「馬鹿ちげぇ違うよ。あーもうやってらんねえ!オラ、その姿じゃもう今日は外には出られねぇだろ、ここに泊まるぞ、寝ろ」
笑ってマヤを抱きしめ直した。

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