傲慢エルフと変態キメラ Vo1

◇マヤ

教会１５

マヤが演じている王子は、先の魔王との闘いで姉の身代わりになり魔王の生贄となった悲劇の王子の役と思われる。
悲劇の王子とは、『銀の天使』と呼ばれている王子で今は共和国となっているここチェチェイカ共和国の第五王子の事だ。

魔王との大戦末期のある日、魔王が当時王制だったチェチェイカに『この国の住民全員と引き換えに美しいと評判の第三王女を差し出せ』という無茶な要求を突き付けて来た。
国王夫妻は悩んだ末、王女は既に許嫁も決まっており、かしずく者が多すぎて出す事は出来ないと言って、生まれたばかりの第五王子を差し出す事で収めたという。
王子は大変美しい銀髪に銀色の瞳のまるで陶器と銀で作られた様な赤子だったそうだ。
しかし魔王は王女でないなら自分が食らうほどでは無いと言って、王子を連れて来た従者の目の前で待ち構える魔獣の群れの中に赤ん坊だった王子を投げ入れた。
王子は髪の毛一本残らず魔獣の腹に納まったという。
これが『銀の天使』の顛末だ。

この話は有名な話なので魔王討伐が題材の演劇ではよく使用されるが、現実が悲劇的過ぎて大概アレンジされている。
王子は大概大人だし、自力で助かったり勇者が現れて助けてくれたり、何か不思議な力が干渉して異世界へ飛んだりとにかくハッピーエンドで終わるのだが・・・・・・舞台上のマヤ扮する王子は一向に助けてもらえる気配が無かった。
『あぁぁぁっ・・・・りゃめぇっだめぇっ・・・みりゃいれぇみないでぇ・・・・あんっ・・・あんっ・・・あはぁぁぁ！』
只今舞台上の『銀の天使』様は前も後ろもカラスウリ(改)に犯されまくって絶賛喘ぎ中である。
観客席ではガルフがイライラと片足で貧乏ゆすりをしながらドスを聞かせた声で呟いた。
「あんのド淫乱がっ」
「保安上念の為申し上げますが小道具カラスウリ選んだの本人ですからね。」
宣教師が投げやり気味に言い訳した。