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◇マヤ

マヤの値段2

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「三百年以上前だぁ?!魔王が生きてた時代じゃねぇか!テメェそんな可愛いナリして年上か!」
見た目人間の青年期中頃にしか見えないマヤがよもやエルフの自分より百五十年以上も年上とは!
「蛇族は長生きだとは聞いたが・・・イヤ、話がズレた。だからお前の値段と許容できるアソビは何なのか聞いてるんだよ。そういや、お前守り人はどうした?居ないのか?」
「知らない。」
返事は返って来るものの、全く答えにならないマヤの返答に流石にガルフも焦れた。
「分かった、もう良い。」
店員から預かったマヤの赤ずきんが有るはずだ。
見ると、だいぶ色の褪せた頭巾が出て来た。
何と、メニューを表す飾りに本物の宝石や金が使われている。
「・・・大昔の習慣じゃねぇか」
現代は、財産の大半は貨幣となり、商業ギルドに預ける事が出来る様になっている。
この仕組みを作ったのは一つの小さな弱小商業ギルドだった。
約250年前、マイラ公国の一つの小さなギルドが貨幣の売り買いの商売を始めた。
世界中の国の経済運営担当機関と連携を取り、通貨のレートを算出、調整してギルドに来た商人達の差し出した通貨を希望の通貨と交換する。外貨両替だ。
最初はその場で交換するだけの、ただの外貨両替だったのだが、外貨両替は各国を渡り歩く個人の商人達を皮切りに瞬く間に利用者が広がり、小さかったギルドは派生で出来た各国の政治家達との政治的繋がりパイプを梃にしてあっという間に世界最大の商業ギルドの一つに成りあがった。
そのうち両替制度は発展し、預かるだけ預かって必要な時に必要な場所で必要な通貨で引き出せる制度が出来た。
今では、何か後ろ暗い事情の有るのでのもない限り財産は通貨にして商業ギルドに預けるのが普通だ。
口座だけなら戸籍が有れば簡単に開ける。
それ以前は金銀財宝にして身に着けたり家の中に隠すのが通例だった。
特にチェチェイカの娼夫(婦)達は対応出来るメニューを象った飾りにして頭巾に括りつけていたという。
「三百歳以上はマジな話か・・・・」
案内人は赤ずきんとしては50年以上のベテランと言っていたが、百年越えは確実だろう。
百年以上も抱かれ続けているのか・・・・。
そう思うとガルフは妙にイライラしてきた。
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