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すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 1-3
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ルークが何か言う前に、シャルレが小声で指示してきた。
「いつもの事よ。あれは大事無いから放っておいてあげなさい」
一緒に着いてきたシャルレの侍従達も慣れているのか、静かに小さく頭を下げた。
ルークだけが訳が分からない。
そうこうしている内に、ジェイコブ王子の真ん前までたどり着いてしまった。
シャルレの不機嫌とは裏腹に、ジェイコブ王子は実ににこやかに挨拶してきた。
「やぁ、さすが水の豊かな国だね。いつ来てもここの湯殿は素晴らしい」
「お褒めいただき光栄ですわ。ジェイコブ王子におかれましては昼夜問わず我が国をお楽しみ頂いているご様子、誇らしい限りです。今後とも、王子がいらした時に楽しんで頂ける様な国を維持すべく、尽力いたします」
先ほどの不機嫌を微塵も見せず、それは輝く様な笑顔でシャルレは言った。
ジェイコブ王子はシャルレの返答を聞いて『クスリ』と笑って様子のおかしい侍従の腰を抱き寄せた。
「っあっ」
抱き寄せられた拍子にその侍従がさらに体を丸めて変な声を挙げた。
ジェイコブ王子がふわりと微笑み、その侍従を抱え込んだ。
まるで恋人を優しく腕の中に囲い混んだ様に見える。
そこでやっと、ルークは『あぁ・・・』と気がついた。
恐らく、この侍従はジェイコブ王子の後宮に住まう人物の一人なのだろう、この様子では夜の準備を湯殿でして来たと思われる。
シャルレは笑顔を変えずにひとつ小首を傾げる挨拶をしてその場から引き上げようとした。
ジェイコブ王子が侍従を抱えたまま爽やかな笑顔で言う、
「お湯を汚す様な事はしてないよ」
その物言いに、侍従達のどこかで安堵のため息が漏れた。何せ掃除するのは使用人達だ。
「いつもの事よ。あれは大事無いから放っておいてあげなさい」
一緒に着いてきたシャルレの侍従達も慣れているのか、静かに小さく頭を下げた。
ルークだけが訳が分からない。
そうこうしている内に、ジェイコブ王子の真ん前までたどり着いてしまった。
シャルレの不機嫌とは裏腹に、ジェイコブ王子は実ににこやかに挨拶してきた。
「やぁ、さすが水の豊かな国だね。いつ来てもここの湯殿は素晴らしい」
「お褒めいただき光栄ですわ。ジェイコブ王子におかれましては昼夜問わず我が国をお楽しみ頂いているご様子、誇らしい限りです。今後とも、王子がいらした時に楽しんで頂ける様な国を維持すべく、尽力いたします」
先ほどの不機嫌を微塵も見せず、それは輝く様な笑顔でシャルレは言った。
ジェイコブ王子はシャルレの返答を聞いて『クスリ』と笑って様子のおかしい侍従の腰を抱き寄せた。
「っあっ」
抱き寄せられた拍子にその侍従がさらに体を丸めて変な声を挙げた。
ジェイコブ王子がふわりと微笑み、その侍従を抱え込んだ。
まるで恋人を優しく腕の中に囲い混んだ様に見える。
そこでやっと、ルークは『あぁ・・・』と気がついた。
恐らく、この侍従はジェイコブ王子の後宮に住まう人物の一人なのだろう、この様子では夜の準備を湯殿でして来たと思われる。
シャルレは笑顔を変えずにひとつ小首を傾げる挨拶をしてその場から引き上げようとした。
ジェイコブ王子が侍従を抱えたまま爽やかな笑顔で言う、
「お湯を汚す様な事はしてないよ」
その物言いに、侍従達のどこかで安堵のため息が漏れた。何せ掃除するのは使用人達だ。
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