真夜中の太陽 ルークの初恋

ルークの初恋 ３－１３

暗闇くらやみを一人で歩いて来たの
古いにしえの戦士から受け継いだランタンに
賢者の石で灯りを灯して
燃料は私の命 これがコンパス代わり

悪意の海を渡り 憎しみの業火に焼かれて
それでも生きてきたの
この身を煤にして それでも笑って見せた
全部飲み干して来たわ 温い物だったと言って見せた
私の胃の腑は灼熱 あんなもの日向水みたいなもの

きずを舐め合うのはそんなに楽しい？
仲間の血はそんなに美味しい？
でもあなた達全然幸せそうじゃ無いじゃない 
奴隷すら羨ましがって
私は御免だわ 共食いなんて興味ない

暗闇を一人で歩いて来たの
古の戦士から受け継いだランタンに
賢者の石で灯りを灯して
燃料は私の命 これがコンパス代わり

安全な岩壁の家を自ら壊すのね
下は自分達の悪意の海しかないのに
そんなに海に帰りたいなら鯨にでもなればいい
私は御免だわ 抱き締めたい人がいるの 可愛い人よ 無邪気で優しくて
この両腕は捨てない

自分だけが辛かったなんて思わないわ
自分が一番辛かったなんて思いもしないわ
だって ねぇ 地獄なんてそこら中にあるじゃない

一人で歩いて来たわ
隣に立続けられる人なんて一人もいなかった

曲はまだ有ったが、大道芸でやるには長すぎると判断したのだろう、キリの良い所で青年は曲を終え、やはり最後に大仰にお辞儀をした。
静まりかえっていた観衆から惜しみない拍手と歓声が上がった。
「本日は誠に有難うございます。ブガヤの出し物は今日はこれまで、再びまみえる事が出来たあかつきには又、御方々のお耳を楽しませる事が出来る曲を、お約束いたしさうらう」
青年はそう言って、締めくくった。