真夜中の太陽 ルークの初恋

ルークの初恋 ２ー３

ルークがシャルレの楽屋に行くと、既にシャルレは帰って来ていた。
ここの劇場は作りが豪華で、シャルレの楽屋には洗面台や入浴設備が整っている。シャルレ姫は舞台用のメイクを落として、汗を流しに浴室に行こうと用意をしている所だった。
浴室に向かうシャルレの背中を見送って、ルークはやっぱり溜息を一つついた。
そして、着替えのドレスを衣装ケースの中から取り出して洋服掛けに掛けた。
今日のコーディネートは随分と甘めで、太腿の辺りからサイドから後ろにかけて、大き目のギャザーが入った裾の長いドレスで、右側手前に深くスリットが入り、そこに広がり過ぎない様にレースを充てられていた。
バックの造りは背中はすっきりとシンプル、かつ大きく開いていて、肩甲骨の下あたりまで布が無い、腰のちょっと下あたりからタップリとドレープが取られていてチュチュで膨らませてあり、着た人の体の曲線を際立たせる造りになっていた。
前身ごろはスタンドカラ―式のホルターネックで支えられていて、首の真ん中に大きな月夜見草と言われている花を象った彫金が縫い付けられている。首周りから胸元まで大小様々な宝石が縫い付けられていた。
「あーあ。宝石をビーズ代わりに使うなんて・・・・」
縫い付けられていた宝石が本物である事に気が着いたルークがぼやいた。
「こういう所に縫い付けるビーズはガラスの方が映えるのに・・・」
宝石は相応しい台座に据えてこそ最も魅力を引き出せる、というのがルークの彫金職人としての持論だ。
「・・・こんな無防備なドレス・・・」
一見きちんとしているけれど、ちょっとよく見れば、実に服の中に手を入れやすそうな、上流階級の男達が喜びそうな造りのドレスだと思った。