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蜜月(巣籠もり)

◆◆26

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『抱きしめたい』シェルがそう思った途端、浴室の中が一気に異常に明るくなった。
「シェル・・・」
ロモソルーンが一瞬動きを止めて、体を起こし、シェルとシェルの背後を見つめた。
浴室の床いっぱいに魔法陣が現れていた。
魔法陣を見て、ロモソルーンは『ック』っと嬉しそうに笑った。
そうして、また、シェルにおおいかぶさり、深く口づけを始めた。
「シェル、始まったぞ、千年の魔術が」
キラキラと、もうすっかり聞き慣れた薄い氷のぶつかりあう音がして、浴槽の床に現れた魔法陣から、光の柱が立ち昇った。
美しかった。ここが自宅の浴槽だなんて事すら忘れる程に。
「シェル、最初に何を願った?」
ロモソルーンが見下ろして、答える事ができないシェルに問いかけた。
答える事ができないシェルに問いかけたという事は、返事など必要としていないのだろう。
問いかける事自体が、目的なのだ。
シェルに、考えさせる事が大事な事なのだろう。
案の定、ロモソルーンはやはりシェルの返事など待たずに言葉を続けた。
「大事な事だ。最初に何を願った?
 それを忘れるな、誰にも教えなくて良い。
 俺にも教えてくれなくて良い。
 だが、お前自身は忘れるな。
 それが叶うにしろ、叶わないにせよ、それが、お前の思いの根源だ」
また音がして、今度は二人の魔力の粒が浴室中に飛び散った。
あちらこちらで美しい音を立てて弾けては輝きを放ちながら、立ち昇った光の柱の間を不規則的に飛び回っている。
(思いの根源?『願い』ではなくて?)
ロモソルーンの言葉に、ちょっと気になる所はあったものの、シェルは自分が何を気にしたのか、深く考える事が出来ず、ロモソルーンの言葉を頭の中でただ繰り返した。
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