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暗闇の灯火

◆◆◆◆27

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ドラゴンも人も、もはやその場に居る誰もが動きを留めて、ロモソルーンを見つめた。

悲しい悲しい冬の果て
絶望の淵 欠乏の心
理はない

シェルは歌った。最後の章を。
一体、この歌になんの意味が込められているのかも分からずに歌った。
文字を覚える前から覚えて来た歌だ。
無意識の内に歌える位に体に染み込んでいた。
大好きだった母の歌声と共に。
今は、愛する男の為に歌っている。
ただ、ありったけの思いと魔力を込めて歌った。無事を願って、再びこの両腕の中に、愛しい自分の男が戻って来る事だけを願って。
魔法陣の輝きはグンと増して、もう直視する事すら難しい位輝いていた。
黒い塊の蠢きは怖いくらいに激しくなり、シェルの不安は大きくなるばかりだった。
シェルはもう、村も谷も国も世界もどうでも良かった。
(ロモソルーン!)
自分の男だけ無事ならそれでいい。本当に、そう思った。

照らせ 照らせ

魔法陣の輝きが眩し過ぎて、シェルも、もう目を開ける事が出来なくなっていた。
瞼を閉じてさえ、眩しいと思う位だった。

真実は二人のかいなの中

自分が握りしめている漆黒の手だけが、今やシェルにとって唯一の確かな物だった。
一層魔法陣の輝きが増した数泊あと、あの、魔法陣が咲き弾ける時に鳴る美しいシャラリという音が響き渡って。
辺りが一気に暗くなった。

全ては最初から貴方の中

「全ては最初から貴方の中」
暗くなった事を感じて、シェルが両目をそっと開けると、目の前に、見た事のない漆黒の男が裸でたっていた。
『いた』と言うか、シェルはその男に抱きしめられていた。
その見たことのない漆黒の男は、物凄い美丈夫で、でもシェルがとても良く見慣れた金色の目をしていた。
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