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暗闇の灯火

◆◆◆◆19

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しかし、グエンは、シェルの手前十数歩の所でピタリと歩みを止めたままシェルの方へ来る気配は無かった。
(ひょっとして、来れないの?)
「さぁシェル!魔方陣なんかしまって、俺の所においで」
グエンはやはり、同じところに立って、自信満々の笑顔でシェルに語りかけた。
(魔方陣・・・そうか、あの人、雷の魔方陣が怖くてこれ以上近付いて来れないんだ!)
グエンは今日、式典用の豪華かつ美しい合金の鎧を身に付けていた。
あんな身なりでシェルの描いた雷の魔方陣の中に入ったら、いつ感電するか分かったものでは無い。
シェルが他へ飛ばしたサンダーでさえ、自ら引き寄せてしまいそうだ。
(そういう事なら!)
シェルは、急いで雷の魔方陣の中央に逃げ込んだ。
「シェル?!」
戸惑うグエンをほったらかしにして、シェルは歌の続きを歌い始めた。
ロモソルーンの作り出す魔方陣が再び光の棟を象り始めた。
『シェルー!』
耳慣れた声で、自分の名前をドラゴン語で呼ばれて、シェルは聞こえてきた方向へ視線をやった。
(ファーファナル様)
どういうわけか、ファーファナルが空を飛んでシェルの近くまでやって来たではないか。
『説明は後でする。僕を雷で打って!』
ファーファナルはドラゴン語でまた言った。
(ファーファナル様!?)
ファーファナルはロモソルーンの幼なじみであり、友人だ。
この谷の序列であるメリスの息子でもある。
ドラゴンにとって、子供は何よりの宝のはずだ。
打てと言われて『はい、そうですか』と、本当に打つわけにもいかない。
理由を聞きたいが、歌を中断するわけにもいかず、シェルはファーファナルを見つめる事しか出来なかった。
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