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暗闇の灯火

◆◆◆◆16

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ロモソルーンの周囲の魔方陣は、いまや大小乱雑にロモソルーンの頭上で幾重にも重なり金色だった魔法陣は、上から段々と白い光に、そして微かに青みがかった白い光を放つ魔法陣へと変化していった。
遠目からは、まるで光の棟の様になっていた。
空は熱した鋼鉄のごとく真っ赤に夕焼け、東の空から夕闇の青が追いかけて来ている。鱗雲が放射線上に広がり周りの殆どが夕日の光で赤く染めあがって見えた。
その中で、白い光に照らされるロモソルーンの、なんて厳粛に美しい事か。
そんな緊迫した状況だというのに、グエンはまるで意に介さずガチャギャチャと鎧を鳴らして無遠慮に近づいて来ていた。
グエンは、谷の権力を握る家の後取り息子だ。
止められる人間は一人も居なかった。ルメラですら、動けなかった。
ドラゴン達は人間達の政治には滅多に介入しない、人間はドラゴンの奴隷では無いからだ。
だから、シェルは自力でこの状況を打破するしか無いのに。
『下がって下さい。今取り込み中なんです』たった、それだけの事さえ、喉がつまって言う事ができない。
シェルが狼狽えている間も、グエンはシェルの方に向かって歩いてきていた。
「シェル、君、体は小さいし、直ぐにおびえるし、取柄なんて、男を誘う煽情的な見た目だけかと思っていたけれど、魔力だけは本当に素晴らしかったんだねぇ。そうだよなぁ、ドラゴンが執着する程だものね」
三十メートル程離れた所で、グエンは立ち止まり、オペラの主人公を気取っているのかと突っ込みを入れたくなる位大げさに両手を大きく広げて言った。
シェルが背後に数歩下がると、鎧の音を響かせて、同じだけ近寄って来た。
顔は、気味の悪い笑みの形に歪んでいた。
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