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暗闇の灯火
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「兄弟なんだろう?」
ロモソルーンは、『好きにして良いよ』と言って、大きな鉤爪の先で、シェルの頬を優しくくすぐった。
魔石は、ミレニアの墓の向こう側、先ほどロモソルーンが海から上がって来た崖の手前に埋める異にした。
崖の近くは稀に崖が波や嵐に負けて崩れ落ちる危険が有るから、地元の人間達は墓を作るのを嫌がる場所だ、そこなら、反感も買う事は無いだろうという、シェルの判断だった。
ロモソルーンは、土の魔法と自慢のブレスの力であっという間に固い岩盤に穴を開けると、シェルがそこに魔石を収めた。
普通の埋葬と違って、亡骸はもう魔石になってしまっているから、ギースの墓穴はシェルの腰程度の深さで十分だった。
『埋めていいよ』とシェルがロモソルーンに言うと、ロモソルーンはシェルに、『別れの言葉を言ってやったらどうだ?』と言ってきた。
「お別れは言わなくていいのか?」
「ロモソルーンがお葬式してくれたじゃないか、あれだけ派手にお空までの道を照らして貰ったんだ、もうここにギースの魂は居ないよ。
でも、そうだね。ギースは確か、雪を見た事が無いって言っていたから、雪でも降らそうか」
シェルは言うなり、人差し指をくるりと翻して、ほのかに青白い直径三十センチ程の魔法陣を作り出した。
汝 例え 全てに凍え 身を固くし 白く濁ろうとも
凍える夜に悠久は決して無い
その極寒も汝を永久に閉じこむるには能わず
時には叶わない
汝は静かに天へと上るだろう
直ぐに夜は明ける 汝の体は解ける
さすればいかなる強者も汝を捕まえる事などできはしない
美しき透明なる物 命の源よ
今一たび 一瞬の寒風に踊りその身を現せ 咲け 六角の美しき花よ
舞え 雪花
ロモソルーンは、『好きにして良いよ』と言って、大きな鉤爪の先で、シェルの頬を優しくくすぐった。
魔石は、ミレニアの墓の向こう側、先ほどロモソルーンが海から上がって来た崖の手前に埋める異にした。
崖の近くは稀に崖が波や嵐に負けて崩れ落ちる危険が有るから、地元の人間達は墓を作るのを嫌がる場所だ、そこなら、反感も買う事は無いだろうという、シェルの判断だった。
ロモソルーンは、土の魔法と自慢のブレスの力であっという間に固い岩盤に穴を開けると、シェルがそこに魔石を収めた。
普通の埋葬と違って、亡骸はもう魔石になってしまっているから、ギースの墓穴はシェルの腰程度の深さで十分だった。
『埋めていいよ』とシェルがロモソルーンに言うと、ロモソルーンはシェルに、『別れの言葉を言ってやったらどうだ?』と言ってきた。
「お別れは言わなくていいのか?」
「ロモソルーンがお葬式してくれたじゃないか、あれだけ派手にお空までの道を照らして貰ったんだ、もうここにギースの魂は居ないよ。
でも、そうだね。ギースは確か、雪を見た事が無いって言っていたから、雪でも降らそうか」
シェルは言うなり、人差し指をくるりと翻して、ほのかに青白い直径三十センチ程の魔法陣を作り出した。
汝 例え 全てに凍え 身を固くし 白く濁ろうとも
凍える夜に悠久は決して無い
その極寒も汝を永久に閉じこむるには能わず
時には叶わない
汝は静かに天へと上るだろう
直ぐに夜は明ける 汝の体は解ける
さすればいかなる強者も汝を捕まえる事などできはしない
美しき透明なる物 命の源よ
今一たび 一瞬の寒風に踊りその身を現せ 咲け 六角の美しき花よ
舞え 雪花
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