闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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暗闇の灯火

◆◆◆◆6

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シェルにとって、ギースという存在は、何とも言い表しがたい存在だった。
「友達とも言えないし、仲間というのも違う気がする。ましてや恋なんて微塵もない、それどころじゃなかった。
 でもとても大切な人だった。強いていうなら、兄弟・・・かな」
シェルは、手の中の魔石を見つめて、止まらぬ涙を袖でぬぐいながら、そう言った。
同郷の、フルネームも知らない、ただ、同じ苦しみを味わった人、同じ痛みを知っている人。
別に、かばってもらった事も、かばった事も、慰めてもらった事も慰めた事も無い、でも、ゴメスは多分ギースがとてもお気に入りだったから、ギースがいなかったら、シェルはもっとひどい目に合っていた気がする。
シェルは一生懸命涙を拭ったけれど、涙は後から後から溢れて来て、拭いきれなくていくつも頬を伝って落ちた。
掌の中の魔石にも、涙はいくつも落ちていった。
「ロモソルーン」
「ん?」
「ありがとう」
「・・・うん。勝手に魔石にしてしまったな。亡骸は、あまりにもきちんと残ってて、見せられなくてな」
「うん、分かってる。僕、ギースが死ぬところ、見たから」
「そうか」
そうだ、シェルは、ゴブリンに寄って集って犯されまくって泣き叫ぶギースを檻の中で見ていた。
ゴブリンの角を掴んだギースの手を、別のゴブリンが齧り食う所も、その時のギースの絶叫も、聞いていた。
ギースの腹が、内側から裂けて、ゴブリンの子供が生まれる所も、その直前に、ギースが死んだ所も、そして、その時ギースの体がどうなっていたのかも・・・全部見た。
調教された自分も、ゴブリンに襲われたらきっとあぁなるんだと思って怯えた。
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