闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

暗闇の灯火

◆◆◆３

参列者達は、ファーファナルが立ち上がったのを合図にして墓穴の周囲に集まって行った。
アッシュレアが、ミレニアの亡骸を抱いているので立ち上がれず、座ったまま一回頭を下げて挨拶をした。近くで見ると、ミレニアの亡骸には布と綿で作った手足が付けられていた。
トホスマ・スダの死者埋葬の時の習慣だ。
次に産まれて来る時に、健康な体で産まれるようにと、死者の体に欠損が有る時は欠けている所を燃える素材で作って一緒に燃やすのだ。
きっとアッシュレアが徹夜で作ったのだろう。
あれだけの大立回りをした後、徹夜で作ったにしては綺麗に出来ていた。
ミレニアの亡骸を燃やす役目を立候補したドラゴンは、主のファーファナルと、そのファーファナルの父親で、ミレニア達の最初の雇い主である序列のメリスの他にずいぶんいた。
かといって、今や幼子位の大きさになってしまったミレニアの亡骸を燃やすのに岩をも燃やすドラゴンの炎はそんなに要らないし、何より墓穴の周囲のスペースもそこまではない。
取り合いになって揉めるかと思いきや、ドラゴン達は速やかに順位の高い順から役目を獲得していき、ミレニアの墓の回りはどの竜騎士隊の隊長各の葬儀なのかと思う状態になった。
ミレニアの亡骸は、アッシュレアの腕の中からそっと亡骸を墓穴の中に下ろす籠の中に寝かされてゆっくりと降ろされて行った。
アッシュレアはこの見慣れた光景を、ただ、黙して見つめていた。
亡骸が籠ごと墓穴の底に到達すると、宣教師の祝詞が始まり、参列者達が花束や洋服や食べ物、紙に書いた絵や手紙、本等、燃えて煙になって、ミレニアの魂が天へ昇る道しるべに出来る贈り物を穴の中に籠に入れては降ろした。