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暗闇の灯火

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今日は海辺の秋にしては珍しくカラリと晴れていた。
降り注ぐ日差しを反射して、深いブルーの水面がキラキラと輝きながら揺れている。この辺りは白い石が多く、海の青と剥き出しになった岩肌や墓石の白、その合間に繁った緑の草花とのコントラストは、この世の物とは思えない位美しい。
穏やかなさざ波が、そよ風で揺れる微かな草花の揺れる音が、子守唄かレクイエムの様だった。
美しい風景だった。
アッシュレアは漆黒のシフォンとレース、真っ黒なビーズで出来た喪服に身を包んで、その中に唯一有る死の象徴、墓穴の隣で、ミレニアの亡骸を自分の喪服と同じ布で包んで抱き締めて座っていた。
参列の列は誰ともなしに広場に入る前で足が止まった。
目前のその光景は、まるで、ソコだけが清らかな聖域の様に見えて、誰もが、ドラゴンですら、踏み入れるのをためらった。
ミレニアの亡骸を抱き締めるアッシュレアの姿は、遠目には幼児をあやして抱き抱える喪服の母の様に見えた。
誰もが死んだのはここには姿が無い夫で、子供が生きている事を夢見た。
アッシュレアの手前に、ファーファナルが猫の香箱座りの様に前足を隠して座っていた。
一見何の変哲もない事に見えるが、これは、とてつもなく異常な光景だった。
正式な式典等では、通常、トホスマ・スダのドラゴンは社会的位の高い順に奥から座る。
つまり人間よりも手前に座る事はほぼあり得ない、ドラゴンよりも強い人間なんて、そうそう居ないからだ。
なのに、ファーファナルはアッシュレアよりも手前に座っていた。
まるで番犬の様に。
それが、ここ、トホスマ・スダで君臨しているドラゴンが、自分の世話係を守れなかったという事が、どういう事なのかを物語っていた。

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