闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

暗闇の灯火

◆◆２

シェルは、そんな、娼婦（夫）達の様子を離れた所からロモソルーンと一緒に見つめていた。
複雑な気分だった。
皆が皆そうというわけでは無いが、シェルと町の水商売、とりわけ体を売っている職業の人間とは少し因縁が有るのだ。
シェルの出自が原因だった。
気位の高い高級娼婦（夫）達にとって、シェルは気に入らない存在なのだ。
何だかんだ、どの国に行っても水商売の職業は何故か馬鹿にされるものだ。
とても難しい職業なのに、扱いとしては最下層に見られる事も少なくない、むしろ、見下されるのが普通だ。
そんな彼、彼女達よりももっと見下される存在、人間としてすら扱われない存在。
それが奴隷だ。シェルは性奴隷の出身で、性奴隷は、奴隷の中でも、最も見下される身分だった。
ことに性を売って生活している商売の人間達は、性奴隷を異常に見下している者が多い。
望まず娼婦（夫）になった者達は、そうやって自分よりも下の存在を見つけて、抜け出せない辛い現実と折り合いを付けているのだろう。
シェルが街に来たばかりの頃は街を歩くだけで様々な嫌がらせをされた。
罵声は勿論、突然因縁を付けられて殴られたり、物を投げつけられたりした事もある。
彼らは、どうしても認められなかったのだ。
隣国での身分とはいえ、自分達よりも身分が低い、人間としてすら扱われていない性奴隷が、ドラゴンに見初められて、この、トホスマ・スダで最も大切にされている存在、ドラゴンの世話係になり、谷で最も人気のあるドラゴンの寵愛を受けている事が。
シェルがトホスマ・スダ出身では無い、という事も反感を買っていた。