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アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆◆◆◆19

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ウォルターがそういう間にも、アッシュレアは大きく振りかぶっては鉈を振り下ろし、ゴブリンを切り刻んでいった。
観衆の怒号も止まる兆しもなく、一種集団ヒステリーの様な有り様になっていた。
冷静なのは、戦いなれた竜騎士と、谷の警備をしている自警団や兵士達、それから円陣を組んでいるドラゴンばかり。
「お前らは何だかんだ言って、町の人間に甘やかされている。
かなりの事をしても注意もされない。
モテるお前らが女に嫌われる事をすれば、人気が下がっていい気味だから、むしろ面白がって煽る人間すらいるだろう、自分で気がついて、自分で律するしか無いんだ」
呆然と目前に広がる地獄絵図を見つめる者、苦い薬を飲んだみたいに顔を歪めてうつ向く者、ただ真っ直ぐに、目の前に広がる光景を見つめる者、竜騎士達は、それぞれ色々な思いを己に刻み付けながら、収集のつかなくなった広場で円陣を組み続けた。
30分位たった頃、大衆が騒ぎ疲れ次第に怒号が失くなり、すすり泣く声が響き始めた頃、ルメラが円陣の中から出て来て、アッシュレアに向かって歩き始めた。
この頃には、アッシュレアの鉈を振り下ろす腕も、流石に弱々しさが出てきていた。ゴブリンのうめき声も殆ど消えていた。
「アッシュレア」
優しく声をかけるルメラの声に、聞こえてか聞こえずしてか、振り向く所か何の反応も示さずにアッシュレアは淡々と鉈を振り下ろした。
「正気じゃねぇよ」
円陣の中の誰かの声が聞こえた。
ルメラは声のした方をねめつけたが、アッシュレアはやはり構わず鉈を振り下ろした。
「もう、やめましょう。アッシュレア。充分じゃない」
ルメラがアッシュレアの背中にそっと触れた。
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