闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆◆◆◆１３

先ほど、踊りかからんばかりにアッシュレアに飛びかかろうとしたゴブリンは、今や、アッシュレアに背を向けて、這いずって逃げようとし始めていた。
自分に襲いかかる炎が偽物だと気づいたのか、それ所では無くなったのかは分からないが、体に巻き付く炎を祓いもしないで必死に体を引きずって這った。
「魔獣とは言え、本当にイカレタ生き物よね。ゴブリンて。この期に及んでまだ勃起してるわ」
はいずるゴブリンの傷口を、アッシュレアは容赦なく蹴り上げた。
ゴブリンの絶叫が広場に響き渡った。
その、あまりにも苛烈な所業を見て、ドラゴン達は目を見開いて感嘆の表情を作り、竜騎士達は顔をしかめたり身をすくめ出した。
アッシュレアがまた鉈を振り下ろし、ゴブリンの右足の膝から下が無くなった。
「ミレニアを生きながら食い犯しておいて、お前は切られただけでこの騒ぎか！」
転げまわるゴブリンに向かって、アッシュレアがまた鉈を振り下ろした。
「ギェェェェッ！」
右足がさらに短くなった。太ももの半分から下が無くなった。
ゴブリンは絶叫しながらも、まだ無事な右手と左足を使って、とにかくアッシュレアから逃れようと必死に這いずった。
ゴブリンには精一杯の動きなのだろうが、アッシュレアには追いかけるのに造作の無い早さだった。
数歩、歩きながら利き手の右腕を振り上げると、大きく踏み込み、ゴブリンの左足めがけて振り下ろした。
「ヒギャァァアアアアアアア！」
鉈はゴブリンの左太ももから真ん中に打ち込まれ、一回では切り落とし切れずにアッシュレアは間髪いれずに再度打ち込んだ。
「グギャァァ！」
三肢を打ち落とされたゴブリンの返り血を浴びて、アッシュレアは血まみれになった。