闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆◆◆◆10

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アッシュレアの宣言を皮切りに、円陣を組んでいるドラゴン達が一斉に歌いだした。
ドラゴンの言葉で歌っているので、実際なんと歌っているのかは殆どの人間達には解らなかったが、メロディが耳慣れた童謡だった為、なんと歌っているのかはその場にいた全ての人間に予想が出来た。
ドラゴン達は演出したのだ。
かの有名な魔女の歌を歌って。
その鋭い鉤爪を打ち鳴らし、本物さながらの畏れを込めて歌った。

魔女が踵をかき鳴らした
魔女が踵をかき鳴らした
魔術はあくまでも密やかに
魔女を見つける事はけして出来ない

魔女はどこにでも現れる。
眠る赤子の夢枕。
死にゆく罪人の耳の横
魔女は決して現れない
偽りの聖女の指先
悪意に染まった騎士の爪先

踊れ魔法使いども
今一人の魔女がサバトの扉を開く
悪魔を太陽の元に引きずり出せ
灼熱の荒野の魔女が悪魔の血肉を頬張らん

アッシュレアは、幼い頃から世話係を務めている為、他の世話係の食事の用意等も担う事が多く、火系の魔法が一番得意な人だと言われている。ドラゴン達は、それをなぞらえておとぎ話ではただ『魔女』と描かれているだけの最後の一文を、『灼熱の荒野の魔女』と歌い替えていた。
大きなドラゴン達の鉤爪で鳴らす音は恐ろしく、まるで本物の魔女の歌とはこういう物であろうと、その場に居た誰もが思った。
ロモソルーンにぶら下げられてじたばたしていたゴブリンが己の死期を悟ってガタガタと震えだした。
急に可愛い声を出して命乞いでもしているかの様な声を上げて泣き出した。
それをアッシュレアが覚めた目で見て言った。
「命乞い?泣けば許してもらえるとでも思ってるの?何で許してもらえると思うの?ミレニアはあんなに無惨に殺されたのに」
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