闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆◆◆◆５

「ミレニアは親離れが出来なかっただけさ、両親一度に無くして、一人になって、運良くアッシュレアに保護されたが、それでも普通の子供よりは生き辛かったろうに、やっと大人になって来たかと思うと、人間の男達に手加減なしに集たかられて、さぞや怖かったろう。
　親の居ない娘に対する人間の男達のやりようは時に魔物よりも汚らわしい、ベノン達のように」
ベルマがため息混じりに言った。
「そうか」
トホスマ・スダは土地柄のせいで孤児が多い、ベルマの世話係も家族を失くした少女が何人かいて、守るのに苦労している話しはロモソルーンも時折ベルマから聞いていた。
ロモソルーン自身も、見目の良いシェルを陥れて合法的に皆・の・慰物にしようと企む者達から守るのに苦労していた。
シェルは男だから、相手のその手口はもっと酷かった。
ベルマが谷の方を見つめながら言った。
「きっと、ミレニアにとって、アッシュレアの腕の中だけが、唯一安らげる場所だったんだ」
「人間とは難儀な物だな」
「企みが成功した所で、分不相応な相手を無理矢理番にしたって誰も幸せになんぞなれんのにな。偽りの人格で好いた人を手に入れた所でいつかは瓦解するだけで、悲しみが増えるだけだ」
二人の話しが終わる頃、谷の入り口が見えてきた。
ロモソルーンもベルマもドラゴンの中では逞しい部類に入る、二人の翼にかかれば、その距離は一っ飛びだ。
ロモソルーンの嘴にぶら下げられたゴブリンが哀れっぽくガタガタと震えていた。
「クソが！」
ロモソルーンが悪態をついた。