上 下
249 / 399
アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆◆◆14

しおりを挟む
あんな所、女の子が行っちゃいけない。
「心もそういう準備が出来てるから、最後の最後までまともなままで、本当に、苦しみもがいて、泣き叫んで、誰も助けてくれる人なんていなくて、何度も何度もゴブリンの子供を産まされて、死んでいった。
 あんな所、女性が行っちゃいけない。
 アッシュレア、特に貴女は行っちゃダメだ。
 ミレニアが、全てを犠牲にして守ってくれたんじゃないか」
 あんな姿になってまで、守ってくれた命じゃないか。
 「そんな大事にされた貴女が、あんな所に行っちゃいけないよ」
シェルがそう言った所で、アッシュレアはとうとうシェルの言葉に負けて、その場にへたり込んだ。
「そんな・・・じゃぁ。ミレニアは・・・」
虚空を呆然と見つめながら、それだけ言って老婆のように背中を丸めてへたり込んだ。
「ごめん。否定出来ない。多分、タヨタは知っていたんだ。だからこそあそこまで酷い復讐をしたんだと思う」
ショックを受けて呆然としているアッシュレアを前にしても、シェルは優しい嘘すら言えなかった。
間違っても早まらない様に、ゴブリンに捕まるという事が、一体どういう事なのか分からせておきたかった。
「アッシュレア。敵討ちは竜騎士とドラゴン達に任せよう」
アッシュレアは緩く首を振ったけれど、その場から立ち上がろうともしなかった。
医者のルメラが駆け寄ってきて、アッシュレアの肩をそっと抱いた。
アッシュレアはその腕を、振りほどきも寄りかかりもせず、何かに取り付かれたみたいに虚空を見続けていた。
ドラゴンと竜騎士達が自分達の場所に戻っていき、点呼を再開し始めている。
騒ぎが何とか収まったと思って、シェルはほっと肩を撫で下ろした。
ロモソルーンがそっとシェルの頬にくちばしを寄せた。
「お疲れ」
優しくそっとささやいたそのくちばしに、シェルは、ほっとしながらほうずりをして、
「ありがとう」
と言って握りしめていたロモソルーンの尻尾から手を離した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

『マンホールの蓋の下』

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:1

俺の妹になってください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,114pt お気に入り:9

風ゆく夏の愛と神友

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:681pt お気に入り:1

疲労熱

BL / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:4

文化祭

青春 / 完結 24h.ポイント:482pt お気に入り:1

天翔ける獣の願いごと

BL / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:341

飯がうまそうなミステリ

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:639pt お気に入り:0

恋と鍵とFLAYVOR

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:291pt お気に入り:7

処理中です...