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アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆◆◆11

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「ねぇ、アッシュレア。ゴブリンの姿を見た事は有る?」
シェルは、良い前置きの言葉が見つからず。
おもむろに質問をする事をきっかけにして、話を始めた。
「・・・え?」
息をまいていたアッシュレアが虚を突かれて、思わず間抜けな声を上げた。
シェルは微笑み、小首を傾げながらアッシュレアの返答を待った。
「な、無いわ、だって、ゴブリンは雌雄の区別が付かないから、皆腹に子供がいるゴブリンが町に入るのを恐れてゴブリンの死体だけは持って帰らないじゃない」
アッシュレアはシェルの意図を図りかねたが一応答えた。
「正しくは雌雄の区別が付かないのじゃ無くて、ゴブリンには雄しかいないんだ。
 多少の差は有るけどね、身長はだいたい11,2歳の人間の子供位有るんだ。意外と大きいでしょう?」
シェルは、自分の記憶を手繰り寄せながら、話し始めた。
「ただし、骨格は成人男性なんだ。見た目は鼻の潰れた老人に近い。
 二足歩行では有るけれど、歩き方が何処か不器用で四足歩行の動物が無理矢理二足歩行してるみたいな歩き方をする。
 しかも全身緑色なんだ。鶏の糞みたいな匂いがする、でも見た目は殆ど人間なんだよ。
 ドラゴン達は『匂いが全然違うから分かる』なんて言うけれど、鼻の利かない僕ら人間には、暗闇で見たら本当に人間と区別が着かない。
 そんな不気味な生き物が、数えきれない位下品に笑いながら襲い掛かってくる。
 手足を押さえつけられ、下半身だけ無理やり裸にされ、何匹ものゴブリンに強姦さる。
 巣穴に持ち帰られたら最後、ゴブリンの雛ってね小一時間でお腹から出てくるんだ。
 その度に苗床にされた人の心は激痛と絶望で染まる。
 アイツラは獲物の腹に自分達の子供がいたってお構いなしに犯してくる。
 捕まった人間は犯されながら一時間ごとに化け物の子供を産む地獄を見る事になる。
捕まった人間の気が違っても止めない、むしろ大はしゃぎさ。
 それが、ゴブリンに捕まるという事だよ」
シェルは、暗く笑って言った。
こんな事をこんな所で打ち明けたら、一体今度は後でどんな噂が立つだろうか、そう思うと吐きそうだ。
「アッシュレア、僕はね、知っているかもしれないけれど、僕は、ゴブリンの襲撃を受けた旅団の唯一の生き残りなんだ」
周囲の人間がザワリと身じろぎをした。
アッシュレアがひきつった表情になって、一歩、後ずさりした。
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