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アッシュレアの敵討ち
◆◆◆◆◆◆◆10
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「シェル君・・」
ルメラが驚いて名を呼んだ。
珍しい事だった。
シェルはいつも、こういう騒ぎが起きている所は意識的に避けるのが常だからだ。
トホスマ・スダに奴隷制度は無い、禁止されている。だから、本当の所奴隷という物がどういう物なのか知る者は少ない。
それゆえに、物語から得た歪んだ知識だけで、性奴隷だった過去を持つシェルを見下す人間は意外と多い。
案の定、シェルの名前を聞いて集まっていた人間達の数人が、ひそかに笑い声を上げた。
ロモソルーンが聞きとがめて顔をしかめた。
ところが今朝は、ロモソルーンが何かを言う前にシェル自身が目配せをしてロモソルーンを止めた。
それどころでは無いと思ったからだ。
(アッシュレアを止めないと)
「アッシュレア、よそう。なんの訓練もしていない素人の僕達が行った所で、犬死にするだけだ」
「シェル、でも。私どうしても仇を打ちたいの!打たなきゃいけないのよ!」
思い詰めて言うアッシュレアを、悲しそうに微笑んで見つめて、シェルは覚悟を決めた。
(話さなければ)
どんなに辛くても、ここで、アレを本当に知っているのは、僕だけなんだから。
(地獄を、檻の中から見ていた僕だから言える事を)
呼び覚まさなければならないのは、ゴブリン達に襲撃された、あの暗黒の夜の記憶。
シェルの脳裏を闇が蠢き始めた。
知らず、ベタついた汗が一筋、シェルのこめかみをつたった。
いつの間にか、ロモソルーンが傍に来ていて、自分のしっぽ飾りをシェルに握らせてきた。
シェルは少し驚いてロモソルーンを見上げた。
ロモソルーンの金色の瞳と視線が合った。
それだけで何だか少しほっとして、恐ろしい記憶を自ら呼び覚ます勇気が湧いて来た。
(大丈夫。僕にはロモソルーンっていう灯りがあるから、悪夢に浸かってもきっとちゃんと戻ってこれる)
シェルはロモソルーンと少し見つめ合って、微かに微笑んだ後、アッシュレアに向き直った。
ルメラが驚いて名を呼んだ。
珍しい事だった。
シェルはいつも、こういう騒ぎが起きている所は意識的に避けるのが常だからだ。
トホスマ・スダに奴隷制度は無い、禁止されている。だから、本当の所奴隷という物がどういう物なのか知る者は少ない。
それゆえに、物語から得た歪んだ知識だけで、性奴隷だった過去を持つシェルを見下す人間は意外と多い。
案の定、シェルの名前を聞いて集まっていた人間達の数人が、ひそかに笑い声を上げた。
ロモソルーンが聞きとがめて顔をしかめた。
ところが今朝は、ロモソルーンが何かを言う前にシェル自身が目配せをしてロモソルーンを止めた。
それどころでは無いと思ったからだ。
(アッシュレアを止めないと)
「アッシュレア、よそう。なんの訓練もしていない素人の僕達が行った所で、犬死にするだけだ」
「シェル、でも。私どうしても仇を打ちたいの!打たなきゃいけないのよ!」
思い詰めて言うアッシュレアを、悲しそうに微笑んで見つめて、シェルは覚悟を決めた。
(話さなければ)
どんなに辛くても、ここで、アレを本当に知っているのは、僕だけなんだから。
(地獄を、檻の中から見ていた僕だから言える事を)
呼び覚まさなければならないのは、ゴブリン達に襲撃された、あの暗黒の夜の記憶。
シェルの脳裏を闇が蠢き始めた。
知らず、ベタついた汗が一筋、シェルのこめかみをつたった。
いつの間にか、ロモソルーンが傍に来ていて、自分のしっぽ飾りをシェルに握らせてきた。
シェルは少し驚いてロモソルーンを見上げた。
ロモソルーンの金色の瞳と視線が合った。
それだけで何だか少しほっとして、恐ろしい記憶を自ら呼び覚ます勇気が湧いて来た。
(大丈夫。僕にはロモソルーンっていう灯りがあるから、悪夢に浸かってもきっとちゃんと戻ってこれる)
シェルはロモソルーンと少し見つめ合って、微かに微笑んだ後、アッシュレアに向き直った。
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