闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆◆２９

「千年？」
ロモソルーンの言葉の単語に違和感を感じて、シェルは聞き返した。
今、確かに、ロモソルーンは『俺達はこれから千年を越える時を一緒に過ごす』と言った。
人間の寿命はそんなに無い。
しかし、ロモソルーンが言い間違えをしたというのも考えづらい。
「ロモソルーン、君は一体、僕に内緒で何を企たくらんでいるんだい？」
ロモソルーンが意味ありげに言葉にしたという事は、質問しても良いという事なのだろう、シェルはそう思って、聞き逃さずに聞き返した。
『千年』とは、どういう事なのか、言葉のアヤなのか、それとも、シェルが死んだら、魔法で蝋人形みたいにして、ロモソルーンが死ぬまで側においてくれる、という意味だろうか？
「企んでいるとは人聞きが悪いな。
　そのままの意味さ。
　俺はお前と千年生きたい、逆に、お前の居なくなった世界で、生きて行けるとは思えない。
　ドラゴンは、愛情深い生き物だからな」
そんな、大袈裟な、シェルはその時、そう思った。
ロモソルーンにとっては、言葉のまま通りの意味なのだけれども、人間のシェルにその感覚を直ぐに理解するのは難しい事だ。
しかし、ロモソルーンが本気でシェルと千年生きるつもりなのは取り合えず分かった。
そして、ドキドキした。
ロモソルーンが本当にシェル無しでは生きて行けないかどうかはともかくとして、彼がシェルを、どう言った形でかは未だ分からないけれど、千年、ロモソルーンと一緒に過ごせる何かに変えようとしていると言う事は察する事が出来た。
「方法が、有るの？」
固唾を飲んでロモソルーンを見上げて問いかけたシェルに、ロモソルーンは珍しく獰猛そうに、ギラリと歯を剥き出して笑うと一言
「ある」
と言った。