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アッシュレアの敵討ち
◆◆◆◆◆◆16
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(歌わないと)
セイラは、脳裏に浮かぶ昔の辛いの記憶と闘いながら、必死で唇を動かした。
照らせ 照らせ
ここ最近、ロモソルーンはしきりにこの歌をシェルにせがんでいた。
ロモソルーンは何かとても大事な魔術を行っていて、それはこの歌をシェルに歌わせる事が多分大きく関係している。
真実は二人の腕の中
歌いながら、シェルは自分にとっての真実とは何だろうかと考えた。
真実、本当に起きた事?それとも、もっと象徴的な事だろうか?
本当に起きた事、中の良かった両親、突然起きた殺戮。
訳も分からないまま奴隷にされ、自分の全部を壊された奴隷調教。
絶望の中、さらにゴブリンに襲撃された。
皆ゴブリンに殺された。泣き叫びながら。
檻ごと巣穴に運ばれて、ゴブリンの巣穴で見た事もない大きな卵を見つけた。
シェルには何故か、その初めて見た余りにも大きい卵が、ドラゴンの卵だと直ぐに分かった。
全ては最初から貴方の中
それが、ロモソルーンの卵だった。
鳥の卵だとしても、見たことも無いような美しい漆黒の卵だった。
手のひら一つだけ、届いた。
何故か、その卵が生きている事がシェルにはわかって、その卵が何を必要としているかも分かった。
魔力を欲していた。
魔力なら、シェルも持っている。かなり多めに。
魔術封じはされていたが、魔力封じはされていなかった。
通常時よりも出力は劣るが、魔力は、出る。
この卵、自分に孵せるかもしれない。
そう思った。
「ドラゴンなら、卵から孵ったら、生まれたばかりでも、一人で逃げられるよね」
そこから、ゴブリン達が獲物を求めて巣穴を留守にする時を狙って魔力を送った。
一か八かだった。
ダコタ達に搬送されている間、もしも脱走出来るチャンスが有れば、と、毎食の中から抜き取っていた干し肉や木の実も保って数日。
魔術封じの手錠はされていたが、完全ではなかったので、飲み水が確保出来たのは幸運だった。
自分の命が尽きるのが先か、卵が孵るのが先か、どちらにせよ自分の命は助かるまい。
ただ、この子が助かったら良いと、極限の中でシェルは本気で願った。
セイラは、脳裏に浮かぶ昔の辛いの記憶と闘いながら、必死で唇を動かした。
照らせ 照らせ
ここ最近、ロモソルーンはしきりにこの歌をシェルにせがんでいた。
ロモソルーンは何かとても大事な魔術を行っていて、それはこの歌をシェルに歌わせる事が多分大きく関係している。
真実は二人の腕の中
歌いながら、シェルは自分にとっての真実とは何だろうかと考えた。
真実、本当に起きた事?それとも、もっと象徴的な事だろうか?
本当に起きた事、中の良かった両親、突然起きた殺戮。
訳も分からないまま奴隷にされ、自分の全部を壊された奴隷調教。
絶望の中、さらにゴブリンに襲撃された。
皆ゴブリンに殺された。泣き叫びながら。
檻ごと巣穴に運ばれて、ゴブリンの巣穴で見た事もない大きな卵を見つけた。
シェルには何故か、その初めて見た余りにも大きい卵が、ドラゴンの卵だと直ぐに分かった。
全ては最初から貴方の中
それが、ロモソルーンの卵だった。
鳥の卵だとしても、見たことも無いような美しい漆黒の卵だった。
手のひら一つだけ、届いた。
何故か、その卵が生きている事がシェルにはわかって、その卵が何を必要としているかも分かった。
魔力を欲していた。
魔力なら、シェルも持っている。かなり多めに。
魔術封じはされていたが、魔力封じはされていなかった。
通常時よりも出力は劣るが、魔力は、出る。
この卵、自分に孵せるかもしれない。
そう思った。
「ドラゴンなら、卵から孵ったら、生まれたばかりでも、一人で逃げられるよね」
そこから、ゴブリン達が獲物を求めて巣穴を留守にする時を狙って魔力を送った。
一か八かだった。
ダコタ達に搬送されている間、もしも脱走出来るチャンスが有れば、と、毎食の中から抜き取っていた干し肉や木の実も保って数日。
魔術封じの手錠はされていたが、完全ではなかったので、飲み水が確保出来たのは幸運だった。
自分の命が尽きるのが先か、卵が孵るのが先か、どちらにせよ自分の命は助かるまい。
ただ、この子が助かったら良いと、極限の中でシェルは本気で願った。
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