闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

アッシュレアの敵討ち

◆◆◆◆◆２

ウォルターは問いかけたルメラを静かに見つめて言った。
「お前達人間が、どのくらい深刻に今回の事件を受け止めていたのか知らないが、どちらにせよあいつら三人は今日死ぬか竜騎士として再起不能になっていた筈だ」
じつに当たり前の事を話す様に、そう言った。
あまりに何の罪悪感も感じさせず話すその冷酷な話し方に、ルメラは人間とドラゴンの感覚の隔たりを感じ背筋を凍らせた。
「それは、まさか、ゴブリンの殲滅に乗じて私刑にするって事？」
あえて聞いた。
ルメラの質問を聞いたウォルターが目を丸くした。
「まさか！ドラゴンは法律に反して人間を殺してはならないのがトホスマ・スダのドラゴンの決まりだ。この決まりだけは破ったら即自分が殺されてしまう」
ウォルターは勢いよくブルブルと首を振った。
「なら、どうしてそんなにキッパリと『三人は死ぬ筈』だなんて言いきったの？」
「『死ぬか竜騎士として再起不能』だよ、話を曲解しないでくれ、あの三人はな、竜騎士として物凄く弱かったんだ。筋力とか剣技とかの前の話として、戦う為の勘がなかった。才能がないってああいう事を言うのだろうな。本来先陣が務まる実力じゃ無い、無事で済むわけがない」
「仲間の人達が助けるでしょう？」
「助けると思うか？ドラゴンの世話係をゴブリンの生贄にした面汚しを？男三人で女一人をいびり倒したバカを？」
「でも」
「ミレニアは死んだ。あ奴等に反省の心は微塵も無い。という事はどういう事か分かるか？」
そこまで聞いて、ルメラは『ああ、そうか』と思い至った。
「次を、きっと次にいたぶる女の子を探すわ」
そう言ってルメラは目蓋を伏せた。
視線を下ろした先には、六人の死体が有った。