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アッシュレアの敵討ち
◆◆◆◆10
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「念のため言っておくけど、アッシュレアじゃないわよ。あの子、昨晩うちに泊まったの。私、後追い自殺でもされないか心配で一晩寝ずの番してたもの。あの子一歩も泊まった部屋から出なかったわ」
ルメラだった。
「そもそも、ルメラの筋力で、働き盛りの20代の竜騎士を殺すなんてたとえ相手が一人でも難しいし、ましてや
剣で生きながら手足を切断するなんて無理よ。生物学的に」
医者であるルメラの言葉を聞いて『あぁ。やっぱりアッシュレアじゃ無かった』と周囲の人間はホッとした。
これで犯人がアッシュレアだったら何ともやり切れない話だ。
いくら敵討ちだったとしても、六人も人を殺してしまっては死罪は免れない。
しかし、そうなると本当に分からなくなってくるのが犯人候補だ。
「じゃぁ、一体誰が」
ミレニアは天涯孤独で、敵討ちをしかねない程親しい人間なんてアッシュレアしかいない。
「これじゃまるで、魔女が通ったみたいじゃないか」
誰かがそう、ポツリと言った。
反論する者は居なかった。
『魔女』とは世界中の子供達に親しまれている古くから伝わる童話の登場人物だ。
ありがちな勧善懲悪の話で、主に子供達に『悪い事をすると怖い魔女に懲らしめられちゃうよ』と、いい聞かせる為の童話だと大抵の大人達には思われている。
話の内容は色々有るが、魔女の童話には必ず共通の歌がのっている。
魔女の踵が掻き鳴らされた
魔術は例外なく密やかに
魔女を見つける事は出来ない
魔女は何処にでも現れる
眠る赤子の枕元 死にゆく罪人の夢枕
魔女は何処にも現れない
泣き縋る偽りの乙女の指先 騎士の偽りの正義の横
魔女はある日突然生じ、そして消えた
魔女は必ず訪れる
邪悪なる者のつま先に
神が顔をそむけたその元に
来たれサバトの扉
子供達に目隠しを 男どもに眠りを
ただ火を焚け 邪悪なるものを燻り出せ
踊れ魔法使い共
今、暗黒に眩まされた真実を
太陽の下に引きずり出さん
開けサバトの扉
魔女が魔獣の血肉を頬張らん
物語によって多少違うがこんな歌がのっていて、世界中どこに行っても子供達が歌っている。
そのせいか、旅人たちが集まる様な酒場では、大抵大人達の間で酒の肴に魔女の話が持ち上がる。
『どこそこの国の戦争が魔女のサバトが起きて消えた』とか『飲料水道が何度も不自然に壊れるのは魔女の警告だ』とか、いつしか説明の着かない恐ろしい出来事は『魔女』の『サバト』が起きたんだと実しやかに語られる様になった。
今回の事件は、真にその『魔女』が起こした『サバト』の様な事件だと誰しも思っていた。
ルメラだった。
「そもそも、ルメラの筋力で、働き盛りの20代の竜騎士を殺すなんてたとえ相手が一人でも難しいし、ましてや
剣で生きながら手足を切断するなんて無理よ。生物学的に」
医者であるルメラの言葉を聞いて『あぁ。やっぱりアッシュレアじゃ無かった』と周囲の人間はホッとした。
これで犯人がアッシュレアだったら何ともやり切れない話だ。
いくら敵討ちだったとしても、六人も人を殺してしまっては死罪は免れない。
しかし、そうなると本当に分からなくなってくるのが犯人候補だ。
「じゃぁ、一体誰が」
ミレニアは天涯孤独で、敵討ちをしかねない程親しい人間なんてアッシュレアしかいない。
「これじゃまるで、魔女が通ったみたいじゃないか」
誰かがそう、ポツリと言った。
反論する者は居なかった。
『魔女』とは世界中の子供達に親しまれている古くから伝わる童話の登場人物だ。
ありがちな勧善懲悪の話で、主に子供達に『悪い事をすると怖い魔女に懲らしめられちゃうよ』と、いい聞かせる為の童話だと大抵の大人達には思われている。
話の内容は色々有るが、魔女の童話には必ず共通の歌がのっている。
魔女の踵が掻き鳴らされた
魔術は例外なく密やかに
魔女を見つける事は出来ない
魔女は何処にでも現れる
眠る赤子の枕元 死にゆく罪人の夢枕
魔女は何処にも現れない
泣き縋る偽りの乙女の指先 騎士の偽りの正義の横
魔女はある日突然生じ、そして消えた
魔女は必ず訪れる
邪悪なる者のつま先に
神が顔をそむけたその元に
来たれサバトの扉
子供達に目隠しを 男どもに眠りを
ただ火を焚け 邪悪なるものを燻り出せ
踊れ魔法使い共
今、暗黒に眩まされた真実を
太陽の下に引きずり出さん
開けサバトの扉
魔女が魔獣の血肉を頬張らん
物語によって多少違うがこんな歌がのっていて、世界中どこに行っても子供達が歌っている。
そのせいか、旅人たちが集まる様な酒場では、大抵大人達の間で酒の肴に魔女の話が持ち上がる。
『どこそこの国の戦争が魔女のサバトが起きて消えた』とか『飲料水道が何度も不自然に壊れるのは魔女の警告だ』とか、いつしか説明の着かない恐ろしい出来事は『魔女』の『サバト』が起きたんだと実しやかに語られる様になった。
今回の事件は、真にその『魔女』が起こした『サバト』の様な事件だと誰しも思っていた。
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