闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

アッシュレアの敵討ち

◆３

「・・・・復讐してやるわ」
アッシュレアが静かに言った。
「あ？」
ドスを効かせた声で聞き返したベノンを、恐れもせずに真っすぐ見据えてアッシュレアが静かに言い放った。
「復讐してやる、何年かかっても、絶対に」
「アッシュレア」
医師のルメラが静かにアッシュレアの肩に手を置いて、もう行こうと促した。
「アッシュレア、ミレニアを綺麗にしてあげましょう」
アッシュレアはルメラを見上げてから、もう一度ベノンを睨み付けた。
そしていう、
「絶対に許さないわ。どんな手段を使っても絶対復讐してやる！」
アッシュレアは本気でそう言った。
何をどうするかなんて考えもしなかったけれど、ベノンの態度全てが憎かった。
許せなかった。
ミレニアはゴブリンに殺されて死んだのだ。
魔物に襲われて死ぬ人間の中で、最も悲惨な死に方で。
大事な家族だった。
妹として引き取ったけれど、もう年齢的に恋も結婚も難しい歳になってしまった今となっては、娘を見る様な気持ちでも有った。
いつ花嫁衣裳が見れるのかと楽しみにしていた。
目の前のベノンをもっと罵ってやりたいけれど、余りにも憎くて言葉を思い付けない。
ミレニアの亡骸が、自身を包んだ黒い布の隙間から髪を一房零した。
「アッシュレア」
もう一度ルメラがアッシュレアの名を呼んで、アッシュレアを診察所へと促した。
ベノンを睨みつけて瞬きさえ忘れているアッシュレアの二の腕を、そっと掴んで引っ張る。
アッシュレアはベノンを睨みつけながらも、ルメラの誘導に従って診察所の方へと歩いて行った。
尻もちをついたままのベノンに、仲間のダヤとオルクが駆け寄って行くが、他の竜騎士達はむしろ一歩距離を取った。
壮年の竜騎士が、半歩ベノンの方へ進み出た。