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乙女の祈り乙女の怒り
◆◆◆◆2
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ーーそして、今日の朝、ミレニアは谷の外れの森の入り口に向かってこれ以上無い位全速力で走っていた。
ここ数年、しつこくミレニアに絡んできていた新人竜騎士の青年が言ったのだ。
「最近よくゴブリンが出没している谷のはずれの森の入り口に、アッシュレアが一人で薬草を取りに行った」
そんな、ばかな。
嘘に決まっている。
でも、本当だったら、そう思うと見に行かずにはいられなかった。
走って走って、あのときの泉を通りすぎて走って、辿り着いた森には誰一人として居なかった。
「アッシュレア!」
大声で呼んだけれど、返事は無かった。
当たり前だ。
いくら火と雷の魔法が得意とはいえ、戦士でもないアッシュレアではゴブリン数匹に囲まれたら一溜りもない。
そんな事、アッシュレア自身が一番よく知っている筈だ。
両親を魔物に食われて失くしているアッシュレアが一人でこんな所に来るわけないのだ。
「ふふふ、馬鹿みたい、私、揶揄われたのね」
でも良かった。嘘で。
自分も早く帰ろうと森に背を向けた所で、ふと、近くでボトリと音がした。
音のした方に目を向
けると、少し離れた茂みの中に靴が片方落ちていた。
アッシュレアのよく穿いている、茶色い革靴にそっくりだった。
「ねぇさん!」
ミレニアは悲鳴を上げてソレに駆け寄って膝を着き拾い上げた。
拾い上げてみると、それは靴の形によく似た木片だった。
安堵と同時に、以前聞いた怖い噂話が脳裏に過った。
『ゴブリンは、人間や、人間の持ち物やそれによく似た物を薄暗がりに落として罠を貼る事が有る。』
ガサリと、乱暴に茂みを掻き分ける大きな音が横からした。
ミレニアには逃げる所か、振り向く時間も悲鳴を上げる間も与えられなかった。
ここ数年、しつこくミレニアに絡んできていた新人竜騎士の青年が言ったのだ。
「最近よくゴブリンが出没している谷のはずれの森の入り口に、アッシュレアが一人で薬草を取りに行った」
そんな、ばかな。
嘘に決まっている。
でも、本当だったら、そう思うと見に行かずにはいられなかった。
走って走って、あのときの泉を通りすぎて走って、辿り着いた森には誰一人として居なかった。
「アッシュレア!」
大声で呼んだけれど、返事は無かった。
当たり前だ。
いくら火と雷の魔法が得意とはいえ、戦士でもないアッシュレアではゴブリン数匹に囲まれたら一溜りもない。
そんな事、アッシュレア自身が一番よく知っている筈だ。
両親を魔物に食われて失くしているアッシュレアが一人でこんな所に来るわけないのだ。
「ふふふ、馬鹿みたい、私、揶揄われたのね」
でも良かった。嘘で。
自分も早く帰ろうと森に背を向けた所で、ふと、近くでボトリと音がした。
音のした方に目を向
けると、少し離れた茂みの中に靴が片方落ちていた。
アッシュレアのよく穿いている、茶色い革靴にそっくりだった。
「ねぇさん!」
ミレニアは悲鳴を上げてソレに駆け寄って膝を着き拾い上げた。
拾い上げてみると、それは靴の形によく似た木片だった。
安堵と同時に、以前聞いた怖い噂話が脳裏に過った。
『ゴブリンは、人間や、人間の持ち物やそれによく似た物を薄暗がりに落として罠を貼る事が有る。』
ガサリと、乱暴に茂みを掻き分ける大きな音が横からした。
ミレニアには逃げる所か、振り向く時間も悲鳴を上げる間も与えられなかった。
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