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乙女の祈り乙女の怒り

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いくら下っ端とは言え、日々訓練と戦闘に明け暮れている竜騎士と亡骸を抱えたアッシュレアでは振り上げた手も当たるわけも無く、アッシュレアの手は虚しく空を掻いた。
それでも二度、三度とアッシュレアは泣いて怒りながらベノンに向かった。
「この!卑怯者!言いなさいよ!アンタ達ミレニアに何をしたのよ!許さないわ!絶対に許さない!守るのが仕事のアンタがアンタ達が!何が竜騎士よ!アンタ達いつもそうやってっ!」
見かねたルメラがアッシュレアを止めた。
「アッシュレア、もう止しなさい」
「離して、ルメラ。コイツ、コイツが何かしたのよ!じゃなきゃミレニアがあんな所に行くワケが無いわ。白状しなさいよ。このっ卑怯者!」
「アッシュレア!」
「あー、あー、うるせぇなぁ!俺はなんもしてないって言っているだろう!誰かが何かしたって言う証言か証拠でもあるのかよ!俺はなぁ、ただ」
ミレニアの亡骸を抱え、片手で当たりもしない手を振り回し続け、しつこく挑みかかるアッシュレアが余程うっとおしかったのか、ベノンはアッシュレアの振り下ろされる手を避けながら、蔑みの色を隠しもせず言い放った。
「アンタがゴブリンの足跡がよく見つかる方へ、一人で行ったってミレニアに教えてやっただけだよ!」
広場がシンッっと静まり返った。
「・・・わたし、そんな所になんて行ってないわ」
「知らねぇよ、適当に行っただけだもんヨ」
「アンタ、何したか分かってるの?」
「はぁ?だからミレニアにウソ教えただけじゃねぇか」
怒りで蒼白になって硬直したアッシュレアに、油断したベノンが一歩近づくと。
パァン!
子気味の良い音と共に、今度こそアッシュレアの平手がベノンの頬を打ち抜いた。

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