闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

乙女の祈り乙女の怒り

◆◆４

「アッシュレア！謝るんだ！自分の遣えるドラゴンの顔に向かって泥を投げつけるなんて何て事を！」
顔見知りの谷の人間が慌てて諌めたが、アッシュレアは止まらなかった。
逆に諫めた者を睨みつけ怒鳴りつけた。
「黙りなさいよ！血は繋がっていなくたってこの子は私の家族だわ！こんな酷い事になって、こんな酷い姿のまま無造作に！物みたいに持ち帰られて！どう納めるっていうのよ！？ドラゴン達は人一人丸ごと預かっているって自覚は有るの！？泥投げつけたからって何だっていうのよ！ドラゴンにとってはいつも食べてる物と大して変わらないじゃない！泥位何だって言うのよ！言ってみなさいよ！」
アッシュレアの問いに、答えられる者は誰も居なかった。
辺りがシンッっと静まり返ると、アッシュレアは再びファーファナルの方へ向き直り、一瞥してから辺りを見回しながら言った。
「それで、あの三人は今どこにいるんですか？朝市でミレニアに絡んでたっていう新人三人は？」
「三人？」
ファーファナルがそれは何の話だと聞き返して来た。
どうやら、泥を顔面に投げつけた事に関しては不問にするつもりらしい
「ダヤとベノンとオルク。ミレニアにここ一年ちょっと付きまとってた新米竜騎士達、以前お話した問題児です」
「・・・その人達は、アッシュレア、君が𠮟りつけて大人しくさせたんじゃないのかい？」
「朝市でミレニアに又絡んでたっていうじゃないですか。捜索する時に話が上らなかったんですか？」
眉をしかめて言ったアッシュレアに、ファーファナルも首を傾げながら言った。