闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

乙女の祈り乙女の怒り

◆◆◆◆３

迫り来たのは、平均的な女性と同じ位の大きさの、しかしごつくて歪な緑の手。
まず塞がれたのは口だった。
一瞬蘇ったのは子供の頃の記憶。
自分の体を撫でまわした宣教師のあの手の感触だった。
襲い掛かって来たゴブリンの数は、ミレニアの記憶では五匹だったろうか、ゴブリン達の姿は、皆全身緑色の肌という事を除けば、まるで栄養失調の小柄な老人の様だった。
最初、五匹だったゴブリン達は、巣穴に向かうにつれてどんどん増えて、直ぐに十数匹になった。
こうなったら、もう、竜騎士でもない限りゴブリンに囚われて逃げられる人間なんて居ない。
森の中では、いくらドラゴンが耳が良いと言っても、ミレニア一人が叫び声を上げた所で、声は周囲の木々や土に吸収されて町まで届く事は無いだろう。
どちらにせよ、叫び声は驚愕と恐怖で出なかった。
ゴブリン達は、『ギャッギャ』とどこかで聞いた事が有りそうなダミ声を上げていた。
引き摺られながら、何とか藻掻くが五匹がかりで手足を拘束して引きずられていては、腕が一本自由になった所で直ぐに握り直されて終わった。
引き摺られる背中は、直ぐに擦りむいて、引きずられる度に背中に激痛が走る。痛くて体を強張らせた所で突然集団が止まると、ゴブリン達の暴行が始まった。
人間に近い見た目に反して、ゴブリン達の行動は獣以下だった。
まるで餌に突進する家畜の如く飛びついて来た。
足の間に飛びついて来たかと思うと、下着をはぎ取る事すらせずに又の間だけ布を引き破りいきなり肉塊を突き込まれた。