闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

乙女の祈り乙女の怒り

◆３

「グイグゥと言ったかな？ルメラとウォルターの息子よ」
「はい、メリス様。俺はグイグゥと言います。」
何の用心も無く、グイグゥがメリスに弾む様に歩き寄った。
若いドラゴン特融の無邪気さを見て、メリスが一瞬ほほ笑んだ。
「今、ミレニアと竜騎士が、今朝、一緒にいたと言ったね？確かかね？」
グイグゥはきょとんとした表情で答えた。
「本当だよ？いつも三人でミレニアに話かけて求愛して、仕事の邪魔したり怖がらせてた雄たちの一人だよ。その人ミレニアにスッゴイ嫌われてたんだ」
「名前は分かるかね？」
「えー？名前までは知らない。あ、でも、今朝は他の二人は物陰に居て、その人だけが話しかけてたんで、あれ？と思って印象に残ってたんだよね。」
「いつも三人で？」
「そう、変だよね、人間って。一夫一妻制なのに雌一匹に対して雄三匹で一度に求愛行動してるんだもん、三匹で囲んだりしてさ、ミレニア滅茶苦茶嫌がってた。当たり前だよね。自分よりデカい男がハァハァしながら話しかけて来るんだもん。本気で求愛行動してるにしても遊びで揶揄ってるだけにしても、他の雌達も見てるのに、頭悪いなーって思って気にはしてたんだ。ミレニアって世話係じゃん？ファーファナルさんの所辞めたたら、俺の世話係に成るかも知れないじゃん。人間の雄って頭悪いヤツって雌を虐めたりするからさ。怪我したら可哀そうじゃん」
事の重大さを分かっているのかいないのか、グイグゥの話は要領を得なかった。
メリスが頬を引きつらせながら周りを見た。
「誰か、グイグゥの言う竜騎士について、もっと詳しく知っている者は居るか？」