闇夜の星 暗闇の燈火(やみよの ほし くらやみの ともしび)

落ち葉と魚

◆◆◆２１

別れてはいけないと云う制約など無いが、ドラゴンの性質や思想上、番い解消は無いに等しいのだが・・・・。
ドラゴンは、宝物をため込む性質を持つ者が多い事からも分かる様に、非常に所有欲や守護欲が強い生き物である。そのドラゴン達の中であってもロモソルーンのシェルへの執着は、控え目に言ってかなり激しく、その熱愛ぶりはトホスマ・スダ全土に知れ渡っており、ドラゴン間でロモソルーンはすっかり恋愛に関しては変態扱いとなっている。
何より、生まれてこの方、延々と他の者の目を憚らずに陰日向無くシェルに愛を捧げて来ているのだ。
いまさら好き好んでロモソルーンに言い寄る雌など居る訳も無い。
時々仲間内では『残念戦神』とか言われて弄られる位だ。
何だったら最近じゃ余りの必死さに感動したとかで応援してくれる雌まで出て来た位だ。
別に要らないが。
しかし、それを言葉で説いたとしてもシェルが本当の意味で理解するのは直ぐには無理だろうという事も同時に解っていた。
そして、シェルがそれを理解する必要は無いともロモソルーンは思っていた。
分かって欲しいのは、ロモソルーンのシェルに対する気持ちだけ。
欲しいのはシェルの心唯一つ。
人間の寿命はドラゴンよりもずっと短い、年々気持ちは募るばかりだ。
しかし、どちらにしろ、ロモソルーンにシェル以外の者を愛するなんて出来る筈も無いのだから。
たとえ、それが永久とも思える時間だったとしても、シェルを諦められないのならば待つしか無いのだ。
唯その傍で愛を囁き続けながら。
だから言う、強いふりをして、
『シェル、好きなだけ悩めばいいんだ。五年も独りよがりで愛を捧げてたんだ。シェルの心が決まるまで位待てるさ』
揺るがないこの愛だけを盾と武器にして。