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落ち葉と魚

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固まった姿勢のまま・・・チラリと眼だけがルメラの視線と合う。
ルメラは場違いに無邪気な笑顔でニコッっと笑顔を作った。
シェルの表情はまだ頬の赤みが抜けきらぬものの、段々と情けない困った顔になり、己の緩く起き上がらせた人差し指で自ら指さしながら呆然と呟くようにルメラに問う。
「・・・・深海魚・・・・?」
ルメラはもう一度ニコッっと笑って言った。
「シェル君も、いくら白子や肝が美味しいからって深海魚相手に欲情しないでしょ?美味しい乳が飲めるからって山羊とセックスしたり結婚しようとは思わないわよね?ましてや樹木なんて!でも世話はするし可愛がりもするでしょう?」
そりゃぁそうだ、だって深海魚は深海魚だし山羊は山羊だ。
「深海魚の白子や肝は滋養の効果が高いから、まぁ食べた人によっては性欲が強まる人もいるけどそれは飽く迄も自分の恋愛対象との性行為がしたくなるのであって、決して深海魚には盛らないじゃない。」
「そもそも、深海魚の白子や肝は深海魚を捌いて手に入れる物ですが・・・・?」
「だって殺さないと食べられないじゃない、殺さずに飼っていれば何度でも手に入るなら人間だって養殖して飼うわよ、山羊や果実の成る樹木の様にね、甲斐甲斐しく面倒みるわ。ドラゴンにとっての人間もそれと同じよ。他では絶対手に入らない美味しい魔力が手に入るから、出産率の低いドラゴンの子供を産める類を見ない種族だから、他の種族よりも少し多めに面倒を見る。」
「でも、しかし、では貴方達夫婦は・・・」
「人間にもいるじゃない、ごく稀に。人間以外の者に欲情する変わった趣味の人。」
「はぁ?」
「友好的な海の魔獣と性交した女もいるし、山羊のお尻に欲情する男もいるし人形にしか恋愛感情を持てない男もいるわ。人形どころか絵で描いた異性にしか恋愛感情を持たない人達だっているじゃない。普通のドラゴンにとって人間に恋したドラゴンの扱いはそれヨ。いわゆる変態ね!。」
「ルメラ、私もいるのだからもう少し言葉を選んだくれないか・・・・」
流石に若干打ちひしがれたウォルターが口を挟んだ。
「あら、ごめんなさい貴方、でも私貴方を世界で一番愛してるのよ。」
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