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ロモソルーンには秘密がある

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それから付け加えた。
『あとデートじゃねぇから。食事に誘っただけだから。結局友達誘うから二人きりじゃねぇし』
ファーファナルとベルマは呆れて言った。
『はい皆さーん、ここに超面倒くさい焼きもち焼きの黒いドラゴンがいますよー』
『人間になんて懸想するモンじゃないですねー。』
『さっさと成獣になって言葉が自由に通じる様になればもう少し事態も良くなるのでは』
『無理じゃろ、こんないつまで経っても親離れ出来ないお子さま。そもそも成長する気有るのか疑わしいわい』
渾身のドラゴンブレスで一気に岩壁を溶かしたロモソルーンを生暖かい目で見守りながら仲間のドラゴンは好き勝手言った。
今日の魔石は大量だ。
鉱洞から作った魔石をもって出ていくと外で待っていたシェルや他のドラゴンの世話係がわぁと歓声を上げた。
何も知らないシェルは大喜びでロモソルーンの額に貼り付いた。
ロモソルーンはとたんに上機嫌になり
シェルの足の間に鼻先を割り入れそのまま「高い高い」でもするかの様に空に持ち上げる。シェルもはしゃいで
「凄い凄いロモソルーン」
とされるがままにキャラキャラを笑っている。ルァルァとロモソルーンの上機嫌な声が響く。
ファーファナルとベルマは先程の剣幕からのロモソルーンの代わりように物も言えずにその光景を眺めていた。
魔石を持てるだけ持って帰って行くシェル達を見送りながらファーファナルが呟く。
『所でさ、シェルはロモソルーンのアレ・・どんな意味が有るのか知ってるのかな?』
ベルマも半目になりながら返す
『知らねぇだろ。あの真面目なシェルがあの意味知ってたら外でなんてさせねぇよ』
『だよねぇ』
ドラゴンの言葉で話す二匹をそれぞれの世話係が首を傾げて見つめていた。
ドラゴン達の間では東の端の渓谷のやたらと強い黒い幼いドラゴンが人間に懸想しているのは有名な話だ。
だからトホスマ・スダのドラゴンはシェルに一切手出ししない。
他のドラゴンの恋の相手にチョッカイを出すという事はドラゴン同士の命を懸けた果たし合いをする事を意味するからだ。

ドラゴン達にとって相手の生殖器に鼻を押し付ける行為はとても強い求愛を意味する。他国出身のシェルがそんなこと知るよしもない。
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