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竜騎士(ドラゴンナイト)

◆◆◆4

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「今夜、竜の鱗亭に食事にいかないか?」
なんと谷一番の竜騎士の来訪の理由はシェルを食事に誘う事だった。
シェルは予想もしていなかった誘いに思わず間髪入れずに答えてしまった。
「お断りします」
・・・つい本音が・・・。
「にべもないね、随分だな」
グエンの抗議に慌てて言い訳を付け加える。
「今日は午後から出掛けるのでいつ帰って来れるのかわからないのです」
「なら明日は?」
「ロモソルーンの許可がとれなかった時の返答する時間がないかと」
「明後日では?」
意外としつこいグエンにシェルは心の中でため息をついた。同時に疑問も芽生える。このお誘いはお坊っちゃまの気まぐれや単なる一時の思い付きで誘っている訳では無さそうだ。
「随分と譲歩してくださいますが、一体なぜ僕なんかと食事をしようなどと酔狂なお気持ちが芽生えたので?」
シェルとグエンは今まで得に仲良くして来た事なんてない、グエンは生粋のトホスマ・スダの人間で谷でも代々竜騎士や世話係を排出してきた家系、いわば両家のご子息みたいな物だ。
対するシェルはトホスマ・スダとは遺恨根深い敵国リードウのしかも犯罪者の息子で元奴隷、中でも一番蔑まれる性奴だ。
保護された時ににつけていた鉄枷が装飾の施してあるアクセサリーの様な作りだったので自ら白状しなくても一目で当時の関係者には悟られた。
だからシェルはトホスマ・スダでもいわば下銭の出身の扱いだ。もしロモソルーンの世話係という居場所が無かったらどんな扱いをされていたか判らない。
あからさまな態度をとる人間は減ったものの、今だって谷町を一人で歩くと数少ないゴロツキに野次を飛ばされる事も珍しくない。
「ひどいな、何か魂胆が有るとでも思ったのかい?」
シェルは心のなかでだけ『ええまぁ』と肯定をした。
谷を守ってくれている竜騎士の機嫌を損ねるのはシェルとしても避けたい。
対免状は取り繕わねば。
「いえ・・そういう訳では・・・」
グエンは強く、外見も魅力的だ、竜騎士というトホスマ・スダでは揺るぎ無い高い地位もある。
仲良くなったらシェルを未だに蔑む人間達の目も少しは変わるだろう。シェルにとっては一見良いことずくめだが・・・。
どうにもグエンの態度は上から目線で押し付けがましく、とても友人になろうとしている人間にとる態度には見えなかった。
「悲しいな・・・俺は純粋にシェルと仲良くなりたいと思って声を掛けただけなんだよ。だって君いつも一人きりで何だか可愛そう・・・・で」
可愛そう・・・嫌な言葉だ。
この男の本心とも思えないが、一先ず食事だけすればこの男の機嫌を損ねずに済むのならロモソルーンの将来の為にも大人しく一席付き合うのも良いかも知れない
「ロモソルーンに聞いておきます。友達を連れていっても良いですか?」
医者のルメラの所に伴侶のドラゴンの世話係をしている若い女性が何人かいたハズだ。声をかけたら何人か喜び勇んで来てくれるに違いない。
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