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闇夜の星

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今日はいつにもましてご機嫌なロモソルーンは帰り道も道すがらシェルを鼻で持ち上げて揺らしてみせたり、しっぽに乗せたりじゃれまくり。
笑いだしたシェルが
「もう、そんなに力が有り余ってるならこの大量の食糧運んで」
と冗談混じりに言ったら本当に台車ごと咥えて運んでしまった。
どちらが世話しているのか分かったものじゃない。
しっぽの根元にシェルを乗せ、反らせたしっぽの先でシェルの首筋や体のアチコチをつついてくすぐる。
「ロモソルーン!くすぐったいよ。ひぁぁっ。もうっ大人しく運んでっ。あぁんっ。あっあっアッ・・・アハハハハっーーーヒィぃ」
息つぎが出来ないほど笑わされたシェルの頬は薔薇色に染まっていた。
高地の冷たい風が熱くなった頬を優しく冷ましていた。


トホスマ・スダのドラゴンにはどんなドラゴンにも最小1名以上の人間の世話係が着く。
世話係はドラゴンほんにんが選び、人間はそれに受け入れるか辞退するかだけで選ぶことが出来る。
強かったり鱗の美しいドラゴンは人間にも人気があって、世話係の選定の時は人間達はこぞってドラゴンの気を引こうと躍起になるものだ。
ドラゴンの好きな臭いのする実を粉にして自分の体に振りかけたり。
1日の内何回も目の前を通りすぎてみたり。
やたらきらきらする物を身につけたり。
ロモソルーンは両方だったから、本当に凄かった。
しかし、ロモソルーンが選んだ世話係はシェルただ一人だった。
これは異常なことだと言われた。
シェルは華奢だが男な上に出身は外国なのに。
ロモソルーンは雄で、通常雄のドラゴンは多数の世話係を選ぶものだ。
しかもトホスマ・スダのドラゴンの世話係は昔から女性と相場が決まっている。
多くのドラゴンは雄も雌も人間の男を嫌がるからだ。歴史を紐解いてもその例外は3人しかいない。
しかもその三人は皆トホスマ・スダの出身だし、雌のドラゴンに選ばれていた。

しかしそのロモソルーンの規格外の行動が、トホスマ・スダにシェルの居場所を作った。
それからずっとシェルはロモソルーンと一緒に暮らしている。
世界でただひとりと言われている煌めく漆黒の鱗を持つロモソルーンと一緒に。
ロモソルーンはシェルにとってたった一つの宝物だ。
人付き合いの苦手なシェルが自分以外の温もりを感じる事が出来る唯一の存在でもある。

とはいえ、ロモソルーンが大人になるのもそう遠くは無い話だ。
きっと直ぐに美しい雌のドラゴン達と番ってシェルの元からは離れて行くのだろう。
ドラゴンは非常に愛情深い生き物だ。
番を見つけたら番と住まいを共にする様になる。
特にロモソルーンなんて只の世話係のシェルにさえこれなのだから番ともなったらその執着はひとしおだろうと予想できる。
世話係からは外されなくても直ぐに一緒に住めなくなる。
そうしたら・・・・どうしようかなぁ。
ロモソルーンが番を見つけてシェルと別々に暮らす様になったら、シェルはきっとかなり自分の時間をもて余す様になるだろう。
普通だったら自分もパートナーを見つける所だろうが、シェルはその若さに反して色恋に非常に消極的だった。
性欲というものに嫌悪感さえ抱いている。
それはシェルの過去に起因している。


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