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時計塔の鐘の始まりの歌6

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リリィはその後も様々な所を回った。
露店街、各協会、湖、広場、学校、治療院、役場、それこそ初期の『始まりの鐘』さながらに街中歩き回って合う顔見知り合う顔見知りに自分が『始まりの鐘』の最中で有る事を挨拶して回った。
泣きだす『ガルゴ団長』のファンも居れば、一発殴らせろと言うサナリアのファンらしき者も居た。
最後に立ち寄ったのは、リリィが初めてサナリアの匂いをだどって入った店、件の首飾り型ボディチェーンを購入した店だ。
ここの店主は何の遺伝子が混じっているのか、白い肌に真っ白な髪の大柄な男だった。
名前をセイと言ったか。
「お、ガルゴ団長。とうとうウチにも来たね。今、街の話題はアンタの『始まりの鐘』の件で持ち切りさ、どうだい?探し物は見つかったかい?」
「イヤ、場所は分かっているんだが、手に入れる為には手順を踏む必要が有ってな。」
「はははは!サナリアらしいや!お前さん初期の『始まりの鐘』をさせられてるね?」
『初期の始まりの鐘』とはすなわち、本当は探し物が何処に有るのか分かっているのに、自分のパートナーがこれから他の者に言い寄られたりしない様に、知り合い等の所を探し物を理由に練り歩き、周囲に自分達の結婚の報告をするという行為の事だ。
内戦が激しくなってきた昨今、収入の低い者や人付き合いの下手な者等の中に、既婚者を狙って求愛するという不届き者が増えた為、廃れてしまい、求婚された側が探し物をする。という行事だけが残った。
「たぶんな、ラストはここだ。この店だけ飲食店でもないのに、サナリアの匂いが新旧混在してるからな。ここにはよく来るんですね、アイツ。」
「『正しくは来ていた。』だね、ここ一年は随分まばらになったよ。私としては駄弁り相手が居なくなって寂しいが、彼が幸せなら喜ばしい事だ。」
「駄弁り相手ですか?あの人嫌いが?」
「私は元ウロボロスだからね、サナリアの最初の師は私だよ。とはいえ、元々基礎が出来てる子だったから直ぐに卒業されてしまったがね。親しくなったのは彼が魔導士になってからさ、店に品物を置きに来た懐かしい顔に嬉しくなってしまってね、茶を出した。子供の頃は本当に素直で魅力的だったのに、再会した時はとんでもない恰好をしていて驚いたよ。初めて来た時は赤と緑とオレンジのストライプで色の境目に金の帯が入ったコートを着て来たよ。はははははは!最近じゃ次はどんな奇抜な恰好してくるのか楽しみだけどね!」
「あぁ・・・それサナリアのお気に入りだな、今でも着てますよ。」
「アンタ、隣に立つのイヤじゃないの?あんなド派手な恰好。」
「何で?服なんて脱がしちまえば中身がサナリアなら変わらねぇし、虫除けになるならバンバンザイじゃね?少なくとも既婚者が不倫相手探す時は髪の長いヤツと派手な見た目のヤツは避けるからな、確実に俺の心配が減る。」
「ははははは!分かってるなぁオイ!。」
店主はご機嫌で机を打ち鳴らして笑った。
「気に入った。ちょっと茶でも飲んで行けよ。酒も有るぞ。」
「イヤ、酒は、未だ始まりの鐘は済んでないんで。」
「そうか、まぁ。アンタなら本当はそんな本当にねり歩いて報告しまくらなくても、サナリアは納得すると思うがなぁ。何だったら『どうしても見つからねぇ』って泣きついても探し物の場所教えてくれるんじゃねぇ?」
「だろうな。だからこれは俺がやりたくてやってるのさ、この先サナリアにチョッカイ掛けて来るヤツが少しでも減る様に。」
「ふぅん。本当に本気なのなぁ・・・。じゃぁアレ本当なんだ?ガルゴ団長がマジモンの『神の選定』やったって話。しかも正式な手順で、アレ一度結ぶとチョッコラチョイには解けねぇんだろ?」
「あぁ、本当の話だ。っつか助かってる。アイツほっとくと直ぐ寝食忘れるし。気まぐれに移動魔法でホイホイ世界中アチコチ行くしな。」
「なら、良いか。話しても。」
意味深に店主がボソリと言った。
「・・・・ん?」
「アンタ、魔女って知ってるか?。」
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