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時計塔の鐘の始まりの歌4
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「あー・・・笑ったわ。」
バツの悪そうな、それでいて嬉しそうな何とも言えない顔をしたバルを横目に、一頻り笑ったリリィが寄りかかっていた壁から背中を離して扉の方に足を向けた。
「行くんで?」
「あぁ・・・大体わかった。多分首飾りの場所も分かった。」
「何処に有るんで?」
「いうワケネェだろ、俺が見つけなくちゃいけねぇのに。お前本当、そういうの自分の首絞めるだけだからな。クイブが結婚渋ったのお前のそういう所じゃねぇの?」
「っへ、何とでも!」
「まぁ、良いや。俺も急ぐから、後片付けは一人でやれ。」
そう言って立ち去るリリィの言葉にハッとしたバルが自分の散らかした惨状を見て慌てた。
「え、あ!団長ちょっと待って!手伝って!」
「すまんなー。俺も忙しいんだわ。片づけ終わるころにクイブも帰って来るんじゃねぇの?」
『それじゃぁな!』っと言って手を振って去ってリリィは街に出て行った。
先ず向かったのは行きつけだったいくつかの娼館だった。
「よう。」
っといつもの様に店の扉を潜れば、知った顔の美人達が笑顔で迎えてくれた。
話しかけて来たのは、ガルゴをお気に入りの客と言って憚らなかった店のナンバーワンだった。
「ガルゴ団長いらっしゃい!待っていたわ!とうとう本命の恋人が出来たって聞いたけど、こんな昼間からいらっしゃるなんて噂は間違いだったのかしら?それとも、もう別れたの?」
ナンバーワンの座に相応しい、見る者を魅了する輝く様な笑顔だった。
「・・・どの店行っても同じ事言うなぁ・・・ちょっと探し物をしててな、ここに紅い髪の男が来なかったか?」
そう言うと、店の綺麗所達は一様に顔を曇らせ、そしてやはり直ぐに笑顔になった。
出迎えた時と違った、客を持て成す時の笑顔ではあるけれど。
「来たわ。あの華奢な男の子ね、お菓子を持って丁寧にご挨拶してくれたわよ。」
「やっぱり来たのか、娼館には、何か言ってたか?」
「近々貴方が娼館に探し物をしに来るかも知れないからよろしくって・・・まさか今朝の『始まりの鐘』って!?」
「俺だ。」
「じゃぁ、相手はあの子!?あんな細い子がアナタの相手をするなんて、もつの!?」
「無粋な事言うな、アレの得意魔法の一つは医療系だ。じゃぁ探させてもらうぞ。」
「あら、インテリだったの?ぁあん誘惑しておけば良かった!・・・嫌ね睨まないで!冗談よ。どうぞ、入って、『始まりの鐘』じゃぁ、邪魔なんて出来ないわよ・・・結婚式をぶち壊す様なモノじゃない、どの世界でも生きていけなくなるわ、好きに探して良いけど、昼間だから少ないとは云えお客様もいらっしゃるの、接客中の子達の邪魔はしないでね。それに、ここには探し物は無いと思うわよ?あの子、本当にお菓子持って挨拶に来ただけだったし。」
「俺がここで探し回る事に意味が有るのさ、じゃぁ邪魔するぜ。よう、久しぶり、イヤ、今日は客として来たんじゃネェんだ。俺今『始まりの鐘』の最中なんだよ。」
リリィは店の中を探しながら出合う店の者達全員に挨拶して出て行った。
その日リリィが顔を出した娼館では、突発で行われた催し事でお祭り状態になり、大層賑わった。
バックヤードではリリィの『始まりの鐘』の話題でイッパイになり、半ば恋の様な気持ちを持っていた者もいた様で、泣く者も居れば笑顔で応援の言葉を口にする者も居たという、店のナンバーワンがほろ酔いで言った。
「ほらほら、泣かないの。時間を無駄にしたのは私達でしょう?。元々無理だったのよ。相性ってやっぱり有るの、あの人の熱に怯んだのは私達だったんだから、いいお客なんて他にも沢山いるじゃない、頑張りましょう。」
バツの悪そうな、それでいて嬉しそうな何とも言えない顔をしたバルを横目に、一頻り笑ったリリィが寄りかかっていた壁から背中を離して扉の方に足を向けた。
「行くんで?」
「あぁ・・・大体わかった。多分首飾りの場所も分かった。」
「何処に有るんで?」
「いうワケネェだろ、俺が見つけなくちゃいけねぇのに。お前本当、そういうの自分の首絞めるだけだからな。クイブが結婚渋ったのお前のそういう所じゃねぇの?」
「っへ、何とでも!」
「まぁ、良いや。俺も急ぐから、後片付けは一人でやれ。」
そう言って立ち去るリリィの言葉にハッとしたバルが自分の散らかした惨状を見て慌てた。
「え、あ!団長ちょっと待って!手伝って!」
「すまんなー。俺も忙しいんだわ。片づけ終わるころにクイブも帰って来るんじゃねぇの?」
『それじゃぁな!』っと言って手を振って去ってリリィは街に出て行った。
先ず向かったのは行きつけだったいくつかの娼館だった。
「よう。」
っといつもの様に店の扉を潜れば、知った顔の美人達が笑顔で迎えてくれた。
話しかけて来たのは、ガルゴをお気に入りの客と言って憚らなかった店のナンバーワンだった。
「ガルゴ団長いらっしゃい!待っていたわ!とうとう本命の恋人が出来たって聞いたけど、こんな昼間からいらっしゃるなんて噂は間違いだったのかしら?それとも、もう別れたの?」
ナンバーワンの座に相応しい、見る者を魅了する輝く様な笑顔だった。
「・・・どの店行っても同じ事言うなぁ・・・ちょっと探し物をしててな、ここに紅い髪の男が来なかったか?」
そう言うと、店の綺麗所達は一様に顔を曇らせ、そしてやはり直ぐに笑顔になった。
出迎えた時と違った、客を持て成す時の笑顔ではあるけれど。
「来たわ。あの華奢な男の子ね、お菓子を持って丁寧にご挨拶してくれたわよ。」
「やっぱり来たのか、娼館には、何か言ってたか?」
「近々貴方が娼館に探し物をしに来るかも知れないからよろしくって・・・まさか今朝の『始まりの鐘』って!?」
「俺だ。」
「じゃぁ、相手はあの子!?あんな細い子がアナタの相手をするなんて、もつの!?」
「無粋な事言うな、アレの得意魔法の一つは医療系だ。じゃぁ探させてもらうぞ。」
「あら、インテリだったの?ぁあん誘惑しておけば良かった!・・・嫌ね睨まないで!冗談よ。どうぞ、入って、『始まりの鐘』じゃぁ、邪魔なんて出来ないわよ・・・結婚式をぶち壊す様なモノじゃない、どの世界でも生きていけなくなるわ、好きに探して良いけど、昼間だから少ないとは云えお客様もいらっしゃるの、接客中の子達の邪魔はしないでね。それに、ここには探し物は無いと思うわよ?あの子、本当にお菓子持って挨拶に来ただけだったし。」
「俺がここで探し回る事に意味が有るのさ、じゃぁ邪魔するぜ。よう、久しぶり、イヤ、今日は客として来たんじゃネェんだ。俺今『始まりの鐘』の最中なんだよ。」
リリィは店の中を探しながら出合う店の者達全員に挨拶して出て行った。
その日リリィが顔を出した娼館では、突発で行われた催し事でお祭り状態になり、大層賑わった。
バックヤードではリリィの『始まりの鐘』の話題でイッパイになり、半ば恋の様な気持ちを持っていた者もいた様で、泣く者も居れば笑顔で応援の言葉を口にする者も居たという、店のナンバーワンがほろ酔いで言った。
「ほらほら、泣かないの。時間を無駄にしたのは私達でしょう?。元々無理だったのよ。相性ってやっぱり有るの、あの人の熱に怯んだのは私達だったんだから、いいお客なんて他にも沢山いるじゃない、頑張りましょう。」
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