101 / 124
魔獣の姫に黒の騎士11
しおりを挟む
上げた片手を下げた拍子にクイブの下ろした手首の辺りでテーブルに何か硬い金属が当たる様な音がした。
リリィが耳ざとく聞きつけ音のした所に視線をやると、クイブの袖口からグイネバルドで夫婦同士か結婚を誓い合った恋人同士が着けるバングルが見えた。
「クイブ調査員、婚姻されてたんですか。」
リリィの言葉を聞いて、知らなかったのかサナリアが『え?』という顔をしてバルを見た。
何故そこでバルと見るんだとリリィがサナリアに聞く前に、サナリアがバルに言った。
「とうとう入籍されたんですか、おめでとうございます。と、いちおう言っておきます。」
今度はリリィが驚く番だった。
二人が結婚する程の仲だったどころか交際していた事すら初耳だった。
バルの口からバル自身の色恋の話など殆ど聞いた事が無かった。
バルが少し照れた様な、表情でサナリアに礼を返す。
「・・・十年越しにやっと捕まえたよ。」
「お前、クイブ調査員の恋人だったのか!。」
「えぇ!?団長知らなかったんですか?!」
バルがお道化る。
「私が弟子になっていた時にはすでに付き合ってましたよ、この二人。バル副団長殿もよくこんなツンデレ相手に続きますよね。まさか結婚までするとは思いませんでした。式とか挙げるんですか?」
「止めろ、式とかガラじゃねぇから、コイツにも言ったが!っつか失礼な弟子だなオイ!誰がコミュ症だ!諜報部員に向かって!。ソモソモお前には言われたかねぇ!」
どちらも素は不愛想な人柄だ。
傍から見ているとドングリの背比べに等しいが当人たちは一緒にされたく無いらしい、キイキイ言い合っている。
この師弟の場合軽い口喧嘩はじゃれ合いか挨拶の様な物らしく、言い合う二人を見つめる周囲の者は気にもとめていない。
軽口で罵り合う師弟を横目にリリィがバルに愚痴った。
「頼むぜ、報告しろよ、副団長の結婚だぞ、祝をするに決まっているだろう。」
「さーっせん。何か今更言いづらくて。クイブが来るかどうかは分かりませんぜ?」
「強制は出来んが、たとえ来るのがお前だけでも皆祝いたがるだろうさ。第一騎士団独身ツートップの一抜けだ。どんちゃん騒ぎになるぜ。」
「はは。」
和やかな空気は、バルの一言で変わってしまった。
そろそろ解散しようかという空気になったその時にバルがそう言えば、っと言った。
「二人はしないのか?結婚。」
バルの言葉は二人の仲睦まじさを知る者なら当然の言葉だった。
バル自身、自分の上司のサナリアへの愛情の深さを知っての、むしろ二人がもう一歩進む為の後押しの様な、援護の様な気持ちで言ったのだ。
しかし、一番喜んで話に乗って来るであろうとバルが予想したリリィの返答は煮え切らない物だった。
「あー。ちょっと複雑でな。」
「意外な返答だな、むしろとっくにプロポーズしてるかと思ってたっすよ。」
バルの言葉に複雑な表情をしながら曖昧な返答をするリリィの横で、しかし、逆に意外な言葉を放ったのはサナリアだった。
「プロポーズするなら、私の方からだと思いますよ。」
「「「は!?」」」
驚く三人。
「リリィは苗字を欲しがっていたのに作っていないでしょう、それは結婚相手の苗字を自分の苗字にする為なんじゃ無いんですか?そうすると、今付き合っているのは私なのですから、結婚するなら私の家名に入れる事になるワケです。この辺りの風習は家に向かい入れる方がプロポーズするのが通例だと聞きましたが?」
「お前!ラメシャン王家の血に他国の血を混ぜるつもりか!!」
血相を変えたのは何故がクイブだった。
とうのサナリアは面倒そうな顔をして左手の小指で耳を掻いている。
「王家、王家って面倒ですねぇ・・・この世界にそんな国はもう無いんですよ、クイブあれは帝国に滅ぼされたのです。」
突然のクイブの剣幕にバルが戸惑いながらも『オイ』とクイブを嗜める。
「しかし・・・。」
「それとも何ですか?貴方に私達の結婚を止める正当な権利でも有るとでも?貴方つい最近結婚したばかりじゃないですか」
サナリアの言葉にひるみつつも、クイブは何故か食い下がった。
リリィが耳ざとく聞きつけ音のした所に視線をやると、クイブの袖口からグイネバルドで夫婦同士か結婚を誓い合った恋人同士が着けるバングルが見えた。
「クイブ調査員、婚姻されてたんですか。」
リリィの言葉を聞いて、知らなかったのかサナリアが『え?』という顔をしてバルを見た。
何故そこでバルと見るんだとリリィがサナリアに聞く前に、サナリアがバルに言った。
「とうとう入籍されたんですか、おめでとうございます。と、いちおう言っておきます。」
今度はリリィが驚く番だった。
二人が結婚する程の仲だったどころか交際していた事すら初耳だった。
バルの口からバル自身の色恋の話など殆ど聞いた事が無かった。
バルが少し照れた様な、表情でサナリアに礼を返す。
「・・・十年越しにやっと捕まえたよ。」
「お前、クイブ調査員の恋人だったのか!。」
「えぇ!?団長知らなかったんですか?!」
バルがお道化る。
「私が弟子になっていた時にはすでに付き合ってましたよ、この二人。バル副団長殿もよくこんなツンデレ相手に続きますよね。まさか結婚までするとは思いませんでした。式とか挙げるんですか?」
「止めろ、式とかガラじゃねぇから、コイツにも言ったが!っつか失礼な弟子だなオイ!誰がコミュ症だ!諜報部員に向かって!。ソモソモお前には言われたかねぇ!」
どちらも素は不愛想な人柄だ。
傍から見ているとドングリの背比べに等しいが当人たちは一緒にされたく無いらしい、キイキイ言い合っている。
この師弟の場合軽い口喧嘩はじゃれ合いか挨拶の様な物らしく、言い合う二人を見つめる周囲の者は気にもとめていない。
軽口で罵り合う師弟を横目にリリィがバルに愚痴った。
「頼むぜ、報告しろよ、副団長の結婚だぞ、祝をするに決まっているだろう。」
「さーっせん。何か今更言いづらくて。クイブが来るかどうかは分かりませんぜ?」
「強制は出来んが、たとえ来るのがお前だけでも皆祝いたがるだろうさ。第一騎士団独身ツートップの一抜けだ。どんちゃん騒ぎになるぜ。」
「はは。」
和やかな空気は、バルの一言で変わってしまった。
そろそろ解散しようかという空気になったその時にバルがそう言えば、っと言った。
「二人はしないのか?結婚。」
バルの言葉は二人の仲睦まじさを知る者なら当然の言葉だった。
バル自身、自分の上司のサナリアへの愛情の深さを知っての、むしろ二人がもう一歩進む為の後押しの様な、援護の様な気持ちで言ったのだ。
しかし、一番喜んで話に乗って来るであろうとバルが予想したリリィの返答は煮え切らない物だった。
「あー。ちょっと複雑でな。」
「意外な返答だな、むしろとっくにプロポーズしてるかと思ってたっすよ。」
バルの言葉に複雑な表情をしながら曖昧な返答をするリリィの横で、しかし、逆に意外な言葉を放ったのはサナリアだった。
「プロポーズするなら、私の方からだと思いますよ。」
「「「は!?」」」
驚く三人。
「リリィは苗字を欲しがっていたのに作っていないでしょう、それは結婚相手の苗字を自分の苗字にする為なんじゃ無いんですか?そうすると、今付き合っているのは私なのですから、結婚するなら私の家名に入れる事になるワケです。この辺りの風習は家に向かい入れる方がプロポーズするのが通例だと聞きましたが?」
「お前!ラメシャン王家の血に他国の血を混ぜるつもりか!!」
血相を変えたのは何故がクイブだった。
とうのサナリアは面倒そうな顔をして左手の小指で耳を掻いている。
「王家、王家って面倒ですねぇ・・・この世界にそんな国はもう無いんですよ、クイブあれは帝国に滅ぼされたのです。」
突然のクイブの剣幕にバルが戸惑いながらも『オイ』とクイブを嗜める。
「しかし・・・。」
「それとも何ですか?貴方に私達の結婚を止める正当な権利でも有るとでも?貴方つい最近結婚したばかりじゃないですか」
サナリアの言葉にひるみつつも、クイブは何故か食い下がった。
10
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる