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魔獣の姫に黒の騎士11
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上げた片手を下げた拍子にクイブの下ろした手首の辺りでテーブルに何か硬い金属が当たる様な音がした。
リリィが耳ざとく聞きつけ音のした所に視線をやると、クイブの袖口からグイネバルドで夫婦同士か結婚を誓い合った恋人同士が着けるバングルが見えた。
「クイブ調査員、婚姻されてたんですか。」
リリィの言葉を聞いて、知らなかったのかサナリアが『え?』という顔をしてバルを見た。
何故そこでバルと見るんだとリリィがサナリアに聞く前に、サナリアがバルに言った。
「とうとう入籍されたんですか、おめでとうございます。と、いちおう言っておきます。」
今度はリリィが驚く番だった。
二人が結婚する程の仲だったどころか交際していた事すら初耳だった。
バルの口からバル自身の色恋の話など殆ど聞いた事が無かった。
バルが少し照れた様な、表情でサナリアに礼を返す。
「・・・十年越しにやっと捕まえたよ。」
「お前、クイブ調査員の恋人だったのか!。」
「えぇ!?団長知らなかったんですか?!」
バルがお道化る。
「私が弟子になっていた時にはすでに付き合ってましたよ、この二人。バル副団長殿もよくこんなツンデレ相手に続きますよね。まさか結婚までするとは思いませんでした。式とか挙げるんですか?」
「止めろ、式とかガラじゃねぇから、コイツにも言ったが!っつか失礼な弟子だなオイ!誰がコミュ症だ!諜報部員に向かって!。ソモソモお前には言われたかねぇ!」
どちらも素は不愛想な人柄だ。
傍から見ているとドングリの背比べに等しいが当人たちは一緒にされたく無いらしい、キイキイ言い合っている。
この師弟の場合軽い口喧嘩はじゃれ合いか挨拶の様な物らしく、言い合う二人を見つめる周囲の者は気にもとめていない。
軽口で罵り合う師弟を横目にリリィがバルに愚痴った。
「頼むぜ、報告しろよ、副団長の結婚だぞ、祝をするに決まっているだろう。」
「さーっせん。何か今更言いづらくて。クイブが来るかどうかは分かりませんぜ?」
「強制は出来んが、たとえ来るのがお前だけでも皆祝いたがるだろうさ。第一騎士団独身ツートップの一抜けだ。どんちゃん騒ぎになるぜ。」
「はは。」
和やかな空気は、バルの一言で変わってしまった。
そろそろ解散しようかという空気になったその時にバルがそう言えば、っと言った。
「二人はしないのか?結婚。」
バルの言葉は二人の仲睦まじさを知る者なら当然の言葉だった。
バル自身、自分の上司のサナリアへの愛情の深さを知っての、むしろ二人がもう一歩進む為の後押しの様な、援護の様な気持ちで言ったのだ。
しかし、一番喜んで話に乗って来るであろうとバルが予想したリリィの返答は煮え切らない物だった。
「あー。ちょっと複雑でな。」
「意外な返答だな、むしろとっくにプロポーズしてるかと思ってたっすよ。」
バルの言葉に複雑な表情をしながら曖昧な返答をするリリィの横で、しかし、逆に意外な言葉を放ったのはサナリアだった。
「プロポーズするなら、私の方からだと思いますよ。」
「「「は!?」」」
驚く三人。
「リリィは苗字を欲しがっていたのに作っていないでしょう、それは結婚相手の苗字を自分の苗字にする為なんじゃ無いんですか?そうすると、今付き合っているのは私なのですから、結婚するなら私の家名に入れる事になるワケです。この辺りの風習は家に向かい入れる方がプロポーズするのが通例だと聞きましたが?」
「お前!ラメシャン王家の血に他国の血を混ぜるつもりか!!」
血相を変えたのは何故がクイブだった。
とうのサナリアは面倒そうな顔をして左手の小指で耳を掻いている。
「王家、王家って面倒ですねぇ・・・この世界にそんな国はもう無いんですよ、クイブあれは帝国に滅ぼされたのです。」
突然のクイブの剣幕にバルが戸惑いながらも『オイ』とクイブを嗜める。
「しかし・・・。」
「それとも何ですか?貴方に私達の結婚を止める正当な権利でも有るとでも?貴方つい最近結婚したばかりじゃないですか」
サナリアの言葉にひるみつつも、クイブは何故か食い下がった。
リリィが耳ざとく聞きつけ音のした所に視線をやると、クイブの袖口からグイネバルドで夫婦同士か結婚を誓い合った恋人同士が着けるバングルが見えた。
「クイブ調査員、婚姻されてたんですか。」
リリィの言葉を聞いて、知らなかったのかサナリアが『え?』という顔をしてバルを見た。
何故そこでバルと見るんだとリリィがサナリアに聞く前に、サナリアがバルに言った。
「とうとう入籍されたんですか、おめでとうございます。と、いちおう言っておきます。」
今度はリリィが驚く番だった。
二人が結婚する程の仲だったどころか交際していた事すら初耳だった。
バルの口からバル自身の色恋の話など殆ど聞いた事が無かった。
バルが少し照れた様な、表情でサナリアに礼を返す。
「・・・十年越しにやっと捕まえたよ。」
「お前、クイブ調査員の恋人だったのか!。」
「えぇ!?団長知らなかったんですか?!」
バルがお道化る。
「私が弟子になっていた時にはすでに付き合ってましたよ、この二人。バル副団長殿もよくこんなツンデレ相手に続きますよね。まさか結婚までするとは思いませんでした。式とか挙げるんですか?」
「止めろ、式とかガラじゃねぇから、コイツにも言ったが!っつか失礼な弟子だなオイ!誰がコミュ症だ!諜報部員に向かって!。ソモソモお前には言われたかねぇ!」
どちらも素は不愛想な人柄だ。
傍から見ているとドングリの背比べに等しいが当人たちは一緒にされたく無いらしい、キイキイ言い合っている。
この師弟の場合軽い口喧嘩はじゃれ合いか挨拶の様な物らしく、言い合う二人を見つめる周囲の者は気にもとめていない。
軽口で罵り合う師弟を横目にリリィがバルに愚痴った。
「頼むぜ、報告しろよ、副団長の結婚だぞ、祝をするに決まっているだろう。」
「さーっせん。何か今更言いづらくて。クイブが来るかどうかは分かりませんぜ?」
「強制は出来んが、たとえ来るのがお前だけでも皆祝いたがるだろうさ。第一騎士団独身ツートップの一抜けだ。どんちゃん騒ぎになるぜ。」
「はは。」
和やかな空気は、バルの一言で変わってしまった。
そろそろ解散しようかという空気になったその時にバルがそう言えば、っと言った。
「二人はしないのか?結婚。」
バルの言葉は二人の仲睦まじさを知る者なら当然の言葉だった。
バル自身、自分の上司のサナリアへの愛情の深さを知っての、むしろ二人がもう一歩進む為の後押しの様な、援護の様な気持ちで言ったのだ。
しかし、一番喜んで話に乗って来るであろうとバルが予想したリリィの返答は煮え切らない物だった。
「あー。ちょっと複雑でな。」
「意外な返答だな、むしろとっくにプロポーズしてるかと思ってたっすよ。」
バルの言葉に複雑な表情をしながら曖昧な返答をするリリィの横で、しかし、逆に意外な言葉を放ったのはサナリアだった。
「プロポーズするなら、私の方からだと思いますよ。」
「「「は!?」」」
驚く三人。
「リリィは苗字を欲しがっていたのに作っていないでしょう、それは結婚相手の苗字を自分の苗字にする為なんじゃ無いんですか?そうすると、今付き合っているのは私なのですから、結婚するなら私の家名に入れる事になるワケです。この辺りの風習は家に向かい入れる方がプロポーズするのが通例だと聞きましたが?」
「お前!ラメシャン王家の血に他国の血を混ぜるつもりか!!」
血相を変えたのは何故がクイブだった。
とうのサナリアは面倒そうな顔をして左手の小指で耳を掻いている。
「王家、王家って面倒ですねぇ・・・この世界にそんな国はもう無いんですよ、クイブあれは帝国に滅ぼされたのです。」
突然のクイブの剣幕にバルが戸惑いながらも『オイ』とクイブを嗜める。
「しかし・・・。」
「それとも何ですか?貴方に私達の結婚を止める正当な権利でも有るとでも?貴方つい最近結婚したばかりじゃないですか」
サナリアの言葉にひるみつつも、クイブは何故か食い下がった。
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