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サナリア・アルテミナとリリィ・ブラック10
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一見、ちょっとしたトラブルにしか思えなかったこの騒動は、意外な事にリリィの自分の『番いを守る』という本能に響いてしまった。
トラブルが起きた次の日から、リリィがサナリアから片時も離れなくなり、若干深刻な状態を引き起こした。
先ず、夜サナリアを自分の部屋に泊まらせ自室に帰さない、辛うじてスライムにエサの腐肉を与えに行く時間は確保したが、着替えだけ用意させるとさっさと自分の部屋に連れ込んで、一挙手一投足に反応して『何をするんだ?』『どうした?』『どこへ行くつもりだ。』それはもう、歩き始めた赤んぼうを見る母親よりも張り付いた。
おまけにサナリアが言いなりなのを良い事に、自分の仕事場にサナリアを連れて行くまで行動は発展した。
サナリアと新製品の開発を行っている魔道部門と運営部門の係の物は大激怒だ。
調整や使用方法の使い方をセールス係にレクチャーする等の業務が滞っていた。
必要書類も届かない。
繁殖期の獣人だってここまでじゃないと周囲の獣人達も呆気にとられている。
当のサナリアが元王子で、近衛やメイドに四六時中張り付かれている事に慣れていた為、まるで苦に成っていない所が、救いなのか事態を悪化させてい要因の一つなのか分からない所だ。
「嫌じゃねぇの?」
っと聞くバルにサナリアは涼しい顔をして
「『心臓を許す』とはそういう事ですから。特別ってそういう事ですよ?」
とさらりと言って、自らリリィの側へと身を寄せた。
リリィの喉がゴロリと満足そうに鳴る。本人の太鼓判を貰ってしまったリリィを止められる者は居なかった。
これには発情期のガルゴを知る第一騎士団の面々も流石に呆れたが、今までの『ガルゴ団長の悲恋歴(笑)』を酒の肴にしいていた部下達はその『不憫(笑)』な過去を知っているだけに先の一件を知り『無理もねぇ・・・』『やっと見つけた発情期を乗り切った恋人だもんなぁ』『しかも命の恩人だって?』とそっと同情こそすれ眉を顰める者は居なかった。
リリィはサナリアが傍に居れば更によく働いたし、サナリアが居れば工事中の事故も瞬時に対応出来るので、工事現場ではむしろ歓迎された。
泣くのは新商品の商品化業務が滞る運営部門だ。
今日も工事現場までわざわざ班長クラスの職員が足を運んで来て、亀の歩みとなっている書類上の調整作業を行っていた。
泣き言を言いながら。
「あの・・・」
「何でしょう?」
「ガルゴ団長の視線が物凄く怖いのですが・・・。」
「私を口説かなければ大丈夫ですよ。」
「・・・どうにかなりませんか・・・・。」
「私達は休み返上して働いてますが?」
手は動かしながらも文句タラタラの運営職員にサナリアが軽く反撃する。サナリアの業務が滞った為、休日、ガルゴの工事作業が無い時はサナリアの業務に当てているのだ。
「・・・・何なんですかアレ。」
「これは飽くまでも私の予想ですが、子供の後追い期みたいな物だと思うので、一年も経たない内に納まりますよ。」
「あなた、あの人が何歳に見えてるんですか?!」
「子供の内にきちんと大人になるステップが踏めずにそだった物は大人に成ってからそういった行為が出るものなんですよ。よく言うでしょう?反抗期が無かった人は大人に成ってからやらかす。って。」
「団長がそうだったと?」
「・・・・あなたも運営側ならご存知でしょう、彼の経歴、子供でいられた時期が何処にあったんですか?。グダグダ不満を垂らすなら彼の勤務時間を暫く半日にして後の半日を私の業務とする位の芸当して見せて下さい。運営側でしょう。不満を言うだけならサルにも出来ますよ?。」
「・・・・・。」
「ま、私としては遂に再開を果たした私の可愛い子熊と四六時中一緒に居られるのは実に幸せですがね。」
そう言って、ふわりと笑ったサナリアに運営職員は頭を抱えた。
「本当に不便なら一度休み返上して働いている機関を代休として二週間程使わせて貰えませんか?。確約は出来ませんが多少マシに出来るかも知れませんよ?。」
「・・・・人事に相談してみます。」
冗談交じりに言ったサナリアの解決案を、本気で検討する程度には困っている様だった。
サナリアの冗談交じりの提案は、その日の内に人事会議で相談され、最終手段の一つとしていざ本当に休暇が必要となれば即対応出来る様騎士団等のシフト案が練られ始めた。
ウロボロスグイネバルド支部の戦力二つが一度に二週間も不在になるのだ、それ相応の対策が必要になる。
何時だってウロボロスは人材不足なのだ。
トラブルが起きた次の日から、リリィがサナリアから片時も離れなくなり、若干深刻な状態を引き起こした。
先ず、夜サナリアを自分の部屋に泊まらせ自室に帰さない、辛うじてスライムにエサの腐肉を与えに行く時間は確保したが、着替えだけ用意させるとさっさと自分の部屋に連れ込んで、一挙手一投足に反応して『何をするんだ?』『どうした?』『どこへ行くつもりだ。』それはもう、歩き始めた赤んぼうを見る母親よりも張り付いた。
おまけにサナリアが言いなりなのを良い事に、自分の仕事場にサナリアを連れて行くまで行動は発展した。
サナリアと新製品の開発を行っている魔道部門と運営部門の係の物は大激怒だ。
調整や使用方法の使い方をセールス係にレクチャーする等の業務が滞っていた。
必要書類も届かない。
繁殖期の獣人だってここまでじゃないと周囲の獣人達も呆気にとられている。
当のサナリアが元王子で、近衛やメイドに四六時中張り付かれている事に慣れていた為、まるで苦に成っていない所が、救いなのか事態を悪化させてい要因の一つなのか分からない所だ。
「嫌じゃねぇの?」
っと聞くバルにサナリアは涼しい顔をして
「『心臓を許す』とはそういう事ですから。特別ってそういう事ですよ?」
とさらりと言って、自らリリィの側へと身を寄せた。
リリィの喉がゴロリと満足そうに鳴る。本人の太鼓判を貰ってしまったリリィを止められる者は居なかった。
これには発情期のガルゴを知る第一騎士団の面々も流石に呆れたが、今までの『ガルゴ団長の悲恋歴(笑)』を酒の肴にしいていた部下達はその『不憫(笑)』な過去を知っているだけに先の一件を知り『無理もねぇ・・・』『やっと見つけた発情期を乗り切った恋人だもんなぁ』『しかも命の恩人だって?』とそっと同情こそすれ眉を顰める者は居なかった。
リリィはサナリアが傍に居れば更によく働いたし、サナリアが居れば工事中の事故も瞬時に対応出来るので、工事現場ではむしろ歓迎された。
泣くのは新商品の商品化業務が滞る運営部門だ。
今日も工事現場までわざわざ班長クラスの職員が足を運んで来て、亀の歩みとなっている書類上の調整作業を行っていた。
泣き言を言いながら。
「あの・・・」
「何でしょう?」
「ガルゴ団長の視線が物凄く怖いのですが・・・。」
「私を口説かなければ大丈夫ですよ。」
「・・・どうにかなりませんか・・・・。」
「私達は休み返上して働いてますが?」
手は動かしながらも文句タラタラの運営職員にサナリアが軽く反撃する。サナリアの業務が滞った為、休日、ガルゴの工事作業が無い時はサナリアの業務に当てているのだ。
「・・・・何なんですかアレ。」
「これは飽くまでも私の予想ですが、子供の後追い期みたいな物だと思うので、一年も経たない内に納まりますよ。」
「あなた、あの人が何歳に見えてるんですか?!」
「子供の内にきちんと大人になるステップが踏めずにそだった物は大人に成ってからそういった行為が出るものなんですよ。よく言うでしょう?反抗期が無かった人は大人に成ってからやらかす。って。」
「団長がそうだったと?」
「・・・・あなたも運営側ならご存知でしょう、彼の経歴、子供でいられた時期が何処にあったんですか?。グダグダ不満を垂らすなら彼の勤務時間を暫く半日にして後の半日を私の業務とする位の芸当して見せて下さい。運営側でしょう。不満を言うだけならサルにも出来ますよ?。」
「・・・・・。」
「ま、私としては遂に再開を果たした私の可愛い子熊と四六時中一緒に居られるのは実に幸せですがね。」
そう言って、ふわりと笑ったサナリアに運営職員は頭を抱えた。
「本当に不便なら一度休み返上して働いている機関を代休として二週間程使わせて貰えませんか?。確約は出来ませんが多少マシに出来るかも知れませんよ?。」
「・・・・人事に相談してみます。」
冗談交じりに言ったサナリアの解決案を、本気で検討する程度には困っている様だった。
サナリアの冗談交じりの提案は、その日の内に人事会議で相談され、最終手段の一つとしていざ本当に休暇が必要となれば即対応出来る様騎士団等のシフト案が練られ始めた。
ウロボロスグイネバルド支部の戦力二つが一度に二週間も不在になるのだ、それ相応の対策が必要になる。
何時だってウロボロスは人材不足なのだ。
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